トラスト勉強会① 遺言書作成~遺言書はどうやって作る?~

遺言書作成
「トラスト勉強会」とは・・・
行政書士試験に合格し、伊藤塾さんの実務講座を受講して、行政書士の実務について学んでいます。伊藤塾さんだけではなく、市販の書籍もいくつか購入し、開業に向けて準備をしています。インプットはたくさんしているのですが、アウトプットができていないことに気がつきました。そこで、学んだことを自分なりにまとめて、発表する場を作りたいと思い、このブログで記事にしていくことにしました。

今回は、「遺言書作成」について学んだことをアウトプットします!

遺言書作成とは

行政書士の業務の中で、「民事法務業務」というものがあります。(詳しくは、こちらの記事をご覧下さい。)遺言書作成業務は、この業務の中の1つです。依頼者様の思いを遺言書という形にするこの業務は、積極的に営業ができる業務でもあります。最近は、「終活ブーム」で、昔に比べると遺言書を作成する方も増えてきたと思います。私もこの記事を書き終わったら、自分の遺言書を作成してみようと思います。

遺言の種類

遺言として認められるには、民法に定められた方式で作成する必要があります。そうでない場合は、無効となります。(民法960条:遺言の方式)
民法では、遺言の方式について、以下のように書かれています。

(普通の方式による遺言の種類)
民法967条 遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない。ただし、特別の方式によることを許す場合は、この限りでない。

つまり、大きく「普通方式」と「特別方式」の2つに分類されます。

「特別方式」とは?

民法では、特別方式について、以下のように書かれています。

死亡の危急に迫った者の遺言)
第976条 疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、証人三人以上の立会いをもって、その一人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる。この場合においては、その口授を受けた者が、これを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し、印を押さなければならない。
2 口がきけない者が前項の規定により遺言をする場合には、遺言者は、証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述して、同項の口授に代えなければならない。
3 第1項後段の遺言者又は他の証人が耳が聞こえない者である場合には、遺言の趣旨の口授又は申述を受けた者は、同項後段に規定する筆記した内容を通訳人の通訳によりその遺言者又は他の証人に伝えて、同項後段の読み聞かせに代えることができる。
4 前3項の規定によりした遺言は、遺言の日から二十日以内に、証人の一人又は利害関係人から家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力を生じない。
5 家庭裁判所は、前項の遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得なければ、これを確認することができない。
(伝染病隔離者の遺言)
第977条 伝染病のため行政処分によって交通を断たれた場所に在る者は、警察官一人及び証人一人以上の立会いをもって遺言書を作ることができる。
(在船者の遺言)
第978条 船舶中に在る者は、船長又は事務員一人及び証人二人以上の立会いをもって遺言書を作ることができる。
(船舶遭難者の遺言)
第979条 船舶が遭難した場合において、当該船舶中に在って死亡の危急に迫った者は、証人二人以上の立会いをもって口頭で遺言をすることができる。
2 口がきけない者が前項の規定により遺言をする場合には、遺言者は、通訳人の通訳によりこれをしなければならない。
3 前二項の規定に従ってした遺言は、証人が、その趣旨を筆記して、これに署名し、印を押し、かつ、証人の一人又は利害関係人から遅滞なく家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力を生じない。
4 第976条第5項の規定は、前項の場合について準用する。

このように、特別方式とは死亡の危機が迫っている場合や伝染病になって隔離されている場合など、特別な場合の遺言書の作成方法のことです。行政書士としては、下記の「普通方式」の遺言書作成に携わることが多いようです。

「普通方式」とは?

民法では、普通方式について、以下のように書かれています。

(普通の方式による遺言の種類)
民法967条 遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない。ただし、特別の方式によることを許す場合は、この限りでない。

つまり、普通方式には、「自筆証書」、「公正証書」、「秘密証書」の3種類がある。それぞれ見ていきましょう!

秘密証書遺言

まずは、あまり聞き慣れない「秘密証書遺言」について。民法では、以下のように「秘密証書遺言」について書かれています。

(秘密証書遺言)
第970条 秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 遺言者が、その証書に署名し、を押すこと。
二 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
三 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
四 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。
2 第968条第3項の規定は、秘密証書による遺言について準用する。(第968条3項とは・・・自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。)

「秘密証書遺言」は、その名の通り、”秘密”なのです。つまり、遺言書の内容を証人に知られないというメリットがある一方で、公証人が遺言の内容までを確認をするわけではないので、遺言としての要件が欠けた状態である可能性があります。ただし、 封印した上で公証役場に持参し公正証書にするので、保管については安心です。

「秘密証書遺言」の作成方法とは?

遺言を作成し封印した状態で、公証役場へ持っていきます。 公証人1人と証人2人以上の立ち会いが必要となります。 また署名以外は、ワープロなどで作成したもので構いません。 

自筆証書遺言

「自筆証書遺言」は、その名の通り、”自筆”で書かなければなりません。簡単に準備ができる反面、書式や内容によって無効になる可能性があります。民法では、以下のように「自筆証書遺言」について書かれています。

(自筆証書遺言)
第968条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これにを押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

遺言者が自分で作れるのが、自筆証書遺言です。 紙とペンと印鑑があれば作成でき、最も簡単な方法です。  しかし、本人が書いたものかを証明することが難しい、遺言書が発見されない、などのおそれもあります。

「自筆証書遺言」の作成方法とは?

基本的な作成方法は以下の通りです。

  1. 遺言者が遺言書本文を自筆する
  2. 作成日付を記す
  3. 遺言者本人が署名捺印をする

「自筆証書遺言」のメリット・デメリット

メリット デメリット
・遺言者1人で作成できる
・公証人や承認が必要ない
・遺言内容が他人に知られない
・基本的に、費用がかからない
・書式や内容によって、無効になる可能性がある
・紛失、破棄、盗難の可能性がある
・基本的に、家庭裁判所の検認が必要
・争いが生じる可能性がある

公正証書遺言

「公正証書遺言」は、遺言者が口頭で述べたことを公証人が直接聞いて作成するものです。民法では、以下のように「公正証書遺言」について書かれています。

(公正証書遺言)
第969条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 証人二人以上の立会いがあること。
二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。

公証人が作成するため、遺言書として無効になることが少なく、公証役場で保管されるため、紛失や偽造の恐れも低くなるのが特徴です。

公証人とは?

公証人とは、公証役場で執務を行っている公務員のことです。公証役場とは、公正証書の作成、私文書の認証、確定日付の付与等を行う役場のことです。

証人は誰でもいい?

公正証書遺言の証人になれない者がいます。民法には、以下のように書かれています。

(証人及び立会人の欠格事由)
第974条 次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。
一 未成年者
二 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
三 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

ご自身で証人を用意される場合は、上記の事由に該当しないか確認をしましょう。もし証人を用意することが難しければ、行政書士や司法書士などの専門家に相談してみてください。

「公正証書遺言」の作成方法とは?

基本的な作成方法は以下の通りです。

  1. 遺産のリスト、不動産の地番や家屋番号などの必要書類などを用意する
  2. 公正役場に依頼して、作成する

「公正証書遺言」のメリット・デメリット

メリット デメリット
・書式や内容の不備による無効のおそれが少ない
・紛失、偽造、隠匿のおそれがない
・家庭裁判所の検認が必要ない
・証人が2人必要
・費用や時間がかかる
・手続が面倒
・争いが生じる可能性がある

自筆証書遺言の保管制度とは?

自筆証書遺言の保管制度とは、遺言者が作成した自筆証書遺言を法務局で保管してくれる制度です。注意点としては、全国どこの法務局でもいいわけではなく、遺言者の「住所地」または「本籍地」または「所有不動産の所在地」を管轄する法務局で保管の申請ができることです。また、代理人による申請はできず遺言者本人が管轄の法務局に出頭して行わなければなりません。
▷参考:法務省ウェブサイト「自筆証書遺言書保管制度」について

自筆証書遺言保管制度のメリット・デメリット

メリット デメリット
・外形的ではあるが、遺言書の形式に合っているかチェックしてもらえる
・紛失、偽造のおそれがない
・家庭裁判所の検認が必要ない
・法務省令で定める様式で作成しなければならない
・手数料がかかる(1件3900円)
・本人が法務局へ行かなければならない

遺言書作成業務の流れ

行政書士としてどのような流れで遺言書作成をするかまとめました。今回は、「公正証書遺言」を作成する場合を例にみていきましょう!

  1. 相談・面談
  2. 推定相続人等の調査
  3. 財産調査
  4. 相談・面談
  5. 原案作成
  6. 相談・面談
  7. 公証役場で打ち合わせ
  8. 遺言作成
  9. 確認→完了

行政書士は、あくまでも「遺言書原案の作成」をするということがポイントですね。実際に遺言書を作成するのは公証役場の公証人です。そして、上記を見ると、依頼者との相談や面談が非常に多いことがわかります。依頼者の意思を実現するためには、コミュニケーションをしっかりとって、依頼者の本当の気持ちを知る必要があります。

さいごに

今回の記事では、行政書士の重要な業務の一つである「遺言書作成」について詳しくまとめました。遺言書には、自筆証書、公正証書、秘密証書という3つの普通方式があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。

遺言書作成は、依頼者の大切な意思を法的に確実に残すための重要な業務です。行政書士をはじめ専門家は、依頼者とのコミュニケーションを重視し、信頼関係を築きながら、その意思を正確に形にすることが求められます。

今後もこのブログを通じて、学んだことをアウトプットしながら、皆さんのお役に立てる情報を提供していきたいと思います。


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