先日、美容師の友人から独立を考えているという相談を受けました。美容院を開業するには、どんな準備が必要なのでしょうか？実は、美容院を開業するにあたって、美容師法やその地域の条例など、さまざまなルールに気をつけなければいけません。そこで、この記事では、美容院を開業するまでのステップと必要な書類等をまとめました。（この記事では、北九州市で美容院を開業する場合について書いています。）
うつのみや・美容院の開業に興味がある
・北九州市で美容院を開きたい
美容とは？ 美容師とは？
美容師法によると、下記のように定められています。
「美容」とは、パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすること
「美容師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて美容を業とする者
「美容所」とは、美容の業を行うために設けられた施設
美容師になるには？
美容師になるには、美容師法に規定された美容師養成施設を卒業し、美容師国家試験に合格しなければいけません。国家試験は筆記試験と実技試験があり、両方の試験に合格した後、美容師免許登録申請をすることで、美容師免許証が交付されます。
▷美容師国家試験については、こちらの理容師美容師試験研修センターのウェブサイトをご覧ください。
美容院を開業するには？
新しく美容院を開くには、事前に保健所の担当者に相談をします。保健所は、施設だけでなく、営業者についても確認をします。また、開業後に営業者が変わったり、リフォームしたり、移転したりしたときは、保健所の検査を受ける必要があります。それでは、開業までのロードマップを確認しましょう。
① 事前準備
美容院の事業計画を作成します。特に、資金の融資を検討している方は、この事業計画はしっかりと作成しなければなりません。当事務所では、事業計画を考えるための経営デザインシートやロードマップシートをご準備しています。いきなり、事業計画書を作成するよりも、まずは将来どうなりたいのか、そのために何が必要なのか、ひとつひとつ考えてみましょう！事業計画と同時に、店舗物件も探しておきましょう。
② 資金調達
美容院の開業には、店舗の内装工事などの設備資金や当面の運転資金などを用意する必要があります。一般的に美容院の開業には、1,000万円ほどかかると言われています。
自己資金で賄えない場合は、日本政策金融公庫や銀行などから融資を受けることを検討しましょう。この融資を受ける際に、①で作成した事業計画書が必要となります。
③ 事前相談（工事予定図面、施設の平面図）
北九州市では「美容所 施設基準（※１）」を定めています。工事に着手する前に、保健所に相談をします。保健所では、美容室の構造や設備についての基準を確認し、指導を受けることができます。この段階で、設計図面や設備の詳細を保健所に見せ、適切なアドバイスを受けましょう。これにより、開業後のトラブルを防ぐことができます。
以下のような、基準が定められています。
１）常に清潔に保つこと。
２）消毒設備を設けること。
３）採光、照明及び換気を充分にすること。
４）その他都道府県が条例で定める衛生上必要な措置
５）床及び腰板にはコンクリート、タイル、リノリューム又は板等不浸透性材料を使用すること。
６）洗場は、流水装置とすること。
７）ふた付きの汚物箱及び毛髪箱を備えること。
８）美容師が美容のための直接の作業を行う場合の作業面の照度を100ルクス以上とすること。
９）美容所内の空気１リットル中の炭酸ガスの量を５㎤以下に保つこと。
１０）美容所は、区画を設け、居室と区別すること。
１１）作業室（待合場所、洗場（洗髪場所を含む。）及び美顔術を行う場所を除く。次号において同じ。）の面積は9.9㎡以上とすること。
１２）作業室に置くことができる美容用いすの数は、作業室の床面積が9.9㎡の場合は4脚まで可能。更にいすを増加させる場合は、1脚につき2㎡を加えた作業室が必要。
１３）作業室（待合場所を除く。）に流水式の洗髪設備を設けること。ただし、頭髪に係る施術を行わない場合その他の知事が公衆衛生上支障がないと認める場合は、この限りでない。
１４）コールド液の第１液、第２液及び消毒薬品は、それぞれ別個に保存すること。
１５）皮ふに接する布片及び器具は、消毒済みのものと使用済みのものとを区別して収納する適当な容器を備えること。
１６）自動車に設備を設けて業を行う美容所にあっては、使用する水の量に応じた給水タンク及び汚水の貯留タンクを備えること。
▷引用：北九州市「美容所 施設基準」 PDF
④ 工事着手
保健所に相談後、上記の施設基準に基づいて、工事に着手します。
⑤ 書類提出
オープンの1、2週間前までに以下の書類を提出します。
２）施設の平面図
３）理・美容師診断書（結核、皮膚疾患等の有無） PDF
４）住民票【外国人の場合に必要】
５）検査手数料 16,000円
６）美容師免許証（原本確認）、修了証書（原本確認）
７）法人登記事項証明（原本確認）【初めての法人申請の場合に必要】
⑥ 施設検査
施設の内装などが完了した時点で、営業者立会のもとに、保健所による現地検査が行われます。施設が完成していない場合や設備が整っていない場合には開業できませんので注意が必要です。また、消防署による消防検査も受けましょう。
⑦ 確認証の交付
問題がなければ、1週間ほどで開設検査確認済証が交付されます。この書類は無くさないように注意しましょう。
⑧ 営業開始
美容院の営業を開始します。
なお、以上は北九州市での開業ロードマップです。申請方法や開設検査手数料など、地域により違いがありますので、美容院を開業する地域を管轄する保健所に必ず確認してください。
⑨ 税務署への届出
自営業（個人事業）として美容室を開設する場合、所轄の税務署に「個人事業開廃業等届出書」「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。
美容院の開設には多くの準備と手続きが必要ですが、これらの手順を踏むことでスムーズな開業が実現できます。各地の保健所や税務署での確認事項や地域ごとの違いもあるため、しっかりと確認し、計画的に進めることが成功への鍵です。
オーナーが美容師ではない場合
美容師がいなければ美容院は開業できませんが、美容院の開設者自身が美容師免許を持っていなくても美容師免許を持っている人を雇うことで、美容院を開くことができます。
また、美容師は、美容所以外において、美容の業をしてはいけません（美容師法7条）。ただし、政令で定める特別の事情がある場合（※２）には、美容所以外の場所において美容の業を行うことができるとされています。
※２ 政令で定める特別の事情がある場合とは？
・疾病その他の理由により、美容所にくることができない者に対して美容を行う場合
・婚礼その他の儀式に参列する者に対してその儀式の直前に美容を行う場合
・社会福祉施設等において、その入所者に対して施術を行う場合
・演劇に出演する者等に対して出演等の直前に施術を行う場合
まつ毛エクステについて
まつ毛エクステンション（まつ毛エクステ）を含むまつ毛に係る施術は美容師法の美容行為に該当するため、美容師でないと行うことができません。また、美容所の届出と検査確認が必要です。
近年、「まつ毛エクステンション」（まつ毛エクステ）は、つけまつ毛よりも自然に仕上がるということで流行していますが、まつ毛エクステンション用の接着剤によるかぶれ、目の損傷などの健康被害も増加しています。まつ毛エクステンションを行うにあたっては、事故等が起きないよう十分注意する必要があります。
変更や廃止の手続きについて
届出事項に変更があった場合、届出が必要です。必要事項を記入後、最寄りの区役所保健福祉課（小倉北区、八幡西区を除く）および保健所東部・西部生活衛生課に提出しましょう。
| ・設備や代表者名等を変更した場合 ・美容所を廃止する場合 |
変更・廃止届 PDF |
| ・従業員が異動した場合 （雇い入れ、解雇など） |
理・美容所従業員異動届 PDF |
| ・管理美容師を新しく設置した場合 ・管理美容師を変更した場合 |
管理（理・美）容師設置（変更）届 PDF |
| ・美容所を承継する場合 （事業譲渡、相続、法人の合併・分割） |
・承継届書PDF ・営業者（開設者）相続同意証明書 PDF |
さいごに
この記事では、美容院を開業するためのステップと必要な書類について詳しくご紹介しました。美容師法や地域の条例を守りながら、しっかりと準備を進めることで、スムーズな開業が実現できます。美容師としてのキャリアをスタートさせるための一助になれば幸いです。
なお、当事務所では、忙しい美容師の皆様に代わり、美容院開業のサポートを行っております。事前準備の段階から、書類の作成や提出まで、美容師の方々に寄り添った支援を提供いたします。美容院開業に関するご相談やご質問がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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