外国人が日本に入国し、ビザの発給や在留資格の取得において必要となるのが「在留資格認定証明書(Certificate of Eligibility: COE)」です。この証明書は、日本での滞在目的や活動内容が入国管理局の定める在留資格の条件に合致していることを証明するものです。在留資格認定証明書を取得することで、ビザ申請がスムーズになり、後々のトラブルを防ぐことができます。この記事では、在留資格認定証明書の基本情報、申請方法、必要書類、注意点について詳しく解説します。
在留資格認定証明書とは?
外国人は、原則として日本に来る前に海外にある日本国大使館等でビザ(査証)を取得する必要があります。そのため、入国審査手続の簡易・迅速化を目的とした在留資格認定証明書制度が1990年に導入されました。
在留資格認定証明書(Certificate of Eligibility: COE)は、日本に入国しようとする外国人が、日本での活動内容が入管法に定められた在留資格に該当することを証明するための書類です。観光や親族訪問などの短期滞在や永住者には必要ありませんが、日本での就労や留学、中長期滞在を希望する場合、この証明書があると手続きがスムーズに進みます。ちなみに、2023年3月から在留資格認定証明書を電子メールで受け取ることが可能となりました。
▷出典 : 出入国在留管理庁・パンフレットより
電子メールのサンプル
電子メールの場合、メールの本文に以下のような内容が書かれており、これが在留資格認定証明書となります。
【在留資格認定証明書】
在留資格認定証明書番号:東労一認(TY)|23-○○○○○○
氏名:HOUMU TARO
性別:男 male
国籍・地域:アメリカ合衆国 UNITED STATES
生年月日:1990/04/01
日本での職業及び勤務(通学)先等:○○大学
在留資格:教授(1年) Professor (One year)
交付年月日:2024/7/15
交付者:東京出入国在留管理局長
▷電子メールのサンプルは、こちらの PDFからもご覧いただけます。
使用対象者
在留資格認定証明書は、日本に中長期滞在を予定している外国人が対象です。観光や親族訪問などの短期滞在の在留資格は対象外であり、その場合は申請人が外国にある日本の大使館または領事館に直接申請を行います。
なぜ必要か、いつ使うか
外国人が日本に長期滞在する場合、出入国在留管理局での入国審査が、短期滞在の場合よりも厳しくなります。特に就労目的などで3カ月以上の滞在を予定している場合、在留資格認定証明書の申請をすれば、事前に「日本への入国を許可するかどうか」の審査が行われます。この審査に通ると在留資格認定証明書が発行されます。この在留資格認定証明書は、日本の大使館または領事館で査証申請(ビザ申請)を行う際に必要となります。
有効期限と特例措置
在留資格認定証明書には有効期限があり、発行から3カ月以内に日本に入国しなければなりません。新型コロナウイルス感染症の影響で、2023年1月31日までに限り、有効期限が過ぎた場合でも簡略化された再申請が可能でしたが、現在はこの特例は終了しています。また、在日中に再入国が困難になった場合にも、特例措置が取られていましたが、これも2023年4月30日までで終了となっております。
在留資格と在留カードの違い
在留資格は、日本で特定の活動を行う権利を示す「入管法上の法的な資格」のことです。例えば、仕事をする、会社を経営する、家族と暮らすなどの活動が該当します。一方、在留カードはその在留資格を証明するもので、3カ月を超える在留期間がある外国人に交付されます。在留資格認定証明書は、在留資格を取得する前にビザ申請の際に使用するもので、在留資格を証明するものではありません。
在留資格とは
在留資格は、外国人が日本で特定の活動を行うことができる権利です。これには、仕事をする、会社を経営する、日本人の家族として生活するなどの活動が含まれます。在留資格を取得するためには、所定の条件を満たし、入国管理局の審査に通る必要があります。
▷ビザと在留資格の違いについては、こちらの記事で紹介しています。
在留カードとは
在留カードは、日本で中長期の滞在をする外国人に対して発行されるもので、その在留資格を証明するものです。在留カードには、氏名、在留資格、在留期間、就労制限の有無などが記載されています。短期滞在の場合や、3カ月未満の在留期間の場合には発行されません。
在留資格認定証明書の取得方法
在留資格認定証明書を取得するためには、申請書類を管轄の出入国在留管理局に提出する必要があります。申請は外国人本人が日本に来て行うか、受け入れ機関(企業)が代理で行います。行政書士に依頼することもできますし、特定技能の場合は登録支援機関の職員が申請することもできます。
必要書類
在留資格認定証明書交付申請に必要な書類は、申請する在留資格の種類や企業のカテゴリーによって異なります。以下に、「在留資格:技術・人文知識・国際業務」の場合を例に、必要な書類を紹介します。なお、”企業のカテゴリー”とは、企業の規模によって分けられたグループのことです。
企業のカテゴリーとは?
カテゴリー1: 日本の証券取引所に上場している企業などの条件を満たす企業
カテゴリー2 : 前年度の給与所得の源泉徴収票などの法定調書合計票の源泉徴収税額が1,000万円以上の企業
カテゴリー3 : 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票などの法定調書合計表が提出された団体・個人(カテゴリー2を除く)
カテゴリー4 : 上記に該当しない企業
全カテゴリー共通書類
- 在留資格認定証明書交付申請書 PDF
- 顔写真 ※申請書の写真添付欄に写真を直接印刷してもOK
- 返信用封筒 ※定形封筒に宛先を明記の上、必要な額の郵便切手(簡易書留用)を貼付したもの
- 企業のカテゴリーのどれに該当するかを証明する文書 ※提出可能な書類がない場合は、カテゴリー4に該当することとなる
カテゴリー1
・四季報の写し又は日本の証券取引所に上場していることを証明する文書(写し)
・主務官庁から設立の許可を受けたことを証明する文書(写し)
・高度専門職省令第1条第1項各号の表の特別加算の項の中欄イ又はロの対象企業(イノベーション創出企業)であることを証明する文書(例えば、補助金交付決定通知書の写し)
・上記「一定の条件を満たす企業等」であることを証明する文書(例えば、認定証等の写し)
カテゴリー2
・前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)
・在留申請オンラインシステムに係る利用申出の承認を受けていることを証明する文書(利用申出に係る承認のお知らせメール等)[カテゴリー3に該当することを立証する資料を提出した上で、在留申請オンラインシステムの利用申出が承認された機関に限る。] カテゴリー3
・前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し) - 専門学校を卒業し、専門士又は高度専門士の称号を付与された者については、専門士又は高度専門士の称号を付与されたことを証明する文書
※外国人留学生キャリア形成促進プログラムとして認定を受けた学科を修了した者については、認定学科修了証明書 PDF
- 派遣契約に基づいて就労する場合(申請人が被派遣者の場合)申請人の派遣先での活動内容を明らかにする資料(労働条件通知書(雇用契約書)等)
カテゴリー3,4 共通書類
- 申請人の活動の内容等を明らかにする次のいずれかの資料
(1)労働契約を締結する場合
労働基準法第15条第1項及び同法施行規則第5条に基づき、労働者に交付される労働条件を明示する文書
(2)日本法人である会社の役員に就任する場合
役員報酬を定める定款の写し又は役員報酬を決議した株主総会の議事録(報酬委員会が設置されている会社にあっては同委員会の議事録)の写し
(3)外国法人内の日本支店に転勤する場合及び会社以外の団体の役員に就任する場合
地位(担当業務)、期間及び支払われる報酬額を明らかにする所属団体の文書 - 申請人の学歴及び職歴その他経歴等を証明する文書
(1)申請に係る技術又は知識を要する職務に従事した機関及び内容並びに期間を明示した履歴書
(2)学歴又は職歴等を証明する次のいずれかの文書- 大学等の卒業証明書又はこれと同等以上の教育を受けたことを証明する文書。なお、DOEACC制度の資格保有者の場合は、DOEACC資格の認定証(レベル「A」、「B」又は「C」に限る。)
- 在職証明書等で、関連する業務に従事した期間を証明する文書(大学、高等専門学校、高等学校又は専修学校の専門課程において当該技術又は知識に係る科目を専攻した期間の記載された当該学校からの証明書を含む。)
- IT技術者については、法務大臣が特例告示をもって定める「情報処理技術」に関する試験又は資格の合格証書又は資格証書
※ 専門士又は高度専門士の称号を付与されたことを証明する文書を提出している場合は不要 - 外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事する場合(大学を卒業した者が翻訳・通訳又は語学の指導に従事する場合を除く。)は、関連する業務について3年以上の実務経験を証明する文書
- 登記事項証明書
- 事業内容を明らかにする次のいずれかの資料
(1)勤務先等の沿革、役員、組織、事業内容(主要取引先と取引実績を含む。)等が詳細に記載された案内書
(2)その他の勤務先等の作成した上記(1)に準ずる文書 - 直近の年度の決算文書の写し。新規事業の場合は事業計画書
カテゴリー4 の書類
- 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表を提出できない理由を明らかにする次のいずれかの資料
(1)源泉徴収の免除を受ける機関の場合
外国法人の源泉徴収に対する免除証明書その他の源泉徴収を要しないことを明らかにする資料
(2)上記(1)を除く機関の場合- 給与支払事務所等の開設届出書の写し
- 次のいずれかの資料
(ア) 直近3か月分の給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(領収日付印のあるものの写し)
(イ) 納期の特例を受けている場合は、その承認を受けていることを明らかにする資料
提出先
在留資格認定証明書交付申請は、受入機関の所在地を管轄する地方出入国在留管理局に提出します。申請後、1~3カ月程度で在留資格認定証明書が発行され、申請者に郵送されます。その後、外国人本人が居住する国にある日本の大使館または領事館でビザ申請を行います。
有効期限と返納について
在留資格認定証明書の有効期限は3カ月です。発行から3カ月以内に日本に入国しなければなりません。また、内定取り消しや辞退などで入国を取りやめる場合は、在留資格認定証明書を返納する必要があります。その際、在留資格認定証明書と返納の理由を簡単に記載した理由書を入管に提出します。
交付申請から日本入国までの流れ
在留資格認定証明書交付申請から日本入国までの基本的な流れは以下の通りです。
- 在留資格認定証明書交付申請:日本の地方出入国在留管理局へ、本人または代理人、行政書士などが行います。在留資格認定証明書交付申請を行ったら、通常1~3カ月で在留資格認定証明書が交付されます。
- 在留資格認定証明書交付:地方出入国在留管理局より代理人に認定証明書が送付されます。
- 在外日本公館にて在留資格認定証明書を提示:本人または指定代理機関が申請します。
- 在外日本公館にてビザ発給:通常5営業日程度で発給を受けることができます。
- 日本へ入国:在留資格認定証明書交付日から3カ月以内に行います。来日時の空港にてパスポート、在外日本公館から発給されたビザを提示し、在留資格認定証明書を提出します。パスポートに上陸許可の証印を受けます。それから、在留カードも受け取ります。空港によっては、その日に受け取れずに、入国後に市区町村に届け出た住所(居住地)宛てに郵送されることがあります。
▷出典 : 出入国在留管理庁・パンフレットより
オンライン申請について
令和5年3月17日から、在留資格認定証明書を電子メールで受領することが可能となりました。オンライン申請の場合、窓口に行く必要がなく、自宅やオフィスで申請ができ、24時間利用することができるなどのメリットがあります。
また、受領した電子メールは、海外に住む外国人本人に転送することができ、在留資格認定証明書を海外に郵送する手間、費用、時間がかからなくなります。海外に住む外国人本人は、自身のスマートフォン等で電子メールを提示することで、査証申請(※)及び上陸申請を行うことが可能となります。
※ 紙の在留資格認定証明書を持っている場合は、査証申請時に、その写しを提出することができます。行政書士や代理人等が査証申請する場合は、紙の在留資格認定証明書の原本又は写し若しくは電子メールの印刷物の提出が必要となります。なお、紙の在留資格認定証明書の写しについては、表面と裏面の両面を作成しなければいけません。
▷在留申請のオンライン手続きは、こちらの出入国在留管理庁のウェブサイトから行えます。
さいごに
在留資格認定証明書の取得は、日本での生活や活動をスムーズに始めるための重要なステップです。この証明書を取得することで、ビザ申請がスムーズに進み、入国後のトラブルを防ぐことができます。適切な書類を揃え、正確に申請手続きを行うことが大切です。この記事を通じて、外国人の方々が安心して日本での新しい生活をスタートできるよう、少しでもお役に立てれば幸いです。
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