行政書士法:第1条の3(行政書士の業務2)/第1条の4(使用人行政書士)

令和6年から行政書士試験が大きく変わります。たとえば、「一般知識等」が「基礎知識」に変更され、試験科目として「行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令」が追加されます。
「行政書士法」は、行政書士の制度が定められた法律です。目的、業務、資格、懲戒などが規定されています。行政書士として業務を行うならば、必ず知っておかなくてはならない法律です。私も令和5年行政書士試験合格後から、書籍を購入して行政書士法について勉強してきました。そして理解をさらに深めるために記事にまとめていくことにしました。
今回は、「第1条の3 行政書士の業務/第1条の4 使用人行政書士」についてまとめます。

第1条の3

第一条の三 行政書士は、前条に規定する業務のほか、他人の依頼を受け報酬を得て、次に掲げる事務を業とすることができる。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。
一 前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類を官公署に提出する手続及び当該官公署に提出する書類に係る許認可等(行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二条第三号に規定する許認可等及び当該書類の受理をいう。次号において同じ。)に関して行われる聴聞又は弁明の機会の付与の手続その他の意見陳述のための手続において当該官公署に対してする行為(弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第七十二条に規定する法律事件に関する法律事務に該当するものを除く。)について代理すること。
二 前条の規定により行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成すること。
三 前条の規定により行政書士が作成することができる契約その他に関する書類を代理人として作成すること。
四 前条の規定により行政書士が作成することができる書類の作成について相談に応ずること。
2 前項第二号に掲げる業務は、当該業務について日本行政書士会連合会がその会則で定めるところにより実施する研修の課程を修了した行政書士(以下「特定行政書士」という。)に限り、行うことができる。

第1条の3では、行政書士の非独占業務について書かれています。つまり、行政書士でないものも営業できる「非独占業務」を、行政書士の「法定業務」としているのです。この理由としては、以下のような行政書士の業務における規律上の法定義務が当然適用になるからです。

・事務所における業務報酬額の提示義務
・業務依頼に原則的に応ずべき義務
・業務上の秘密を守る義務
・業務上の誠実、品行方正責務 など

行政書士としてできること

他人の依頼を受け報酬を得て、作成した官公署へ提出する書類の提出手続について代理することができます。これは、単に書類を提出するだけではなく、官公署からの問い合わせに対して、依頼人の代理人として行政書士自身の判断で対応することができることも含みます。また、行政庁が不利益処分をしようとする場合に必要となる聴聞手続や弁明手続についても行政書士は代理人となることができます。以下、行政書士の非独占業務とされている4つの業務を紹介します。(なお、これらも他の法律で制限されているものは除かれます。)

第1条の3ー1項1号

行政書士が作成することができる官公署に提出する書類の意見陳述のための手続(聴聞又は弁明の機会の付与)を代理すること。

許可申請手続における主要な代理業務は、以下のようなものがあります。
① 事前窓口指導等への対応として、代理出頭、行政指導文書の代理請求など
② 追加文書提出につき、申請書の「添付書類」と実体審査資料を法的に区別しての代理対応
③ 申請内容変更指導への代理意思表示、申請審査情報の代理照会および許可・免許の早期処分決定の要望など
④ 許可書・証明書等の代理受領

第1条の3ー1項2号

行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する不服申立て手続き(審査請求、再調査の請求、再審査請求等)について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成すること(特定行政書士のみ)。

2014年6月の行政書士法の改正により、行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する不服申立ての手続きについて代理及びその手続きについて官公署に提出する書類を作成することが、新たな業務として追加されました。それまでは、これを依頼者に代わって行えたのは弁護士だけでしたが、行政書士もできるようになりました。ただし、行政書士ならだれでもできるというわけではありません。研修課程を修了した行政書士(特定行政書士)のみが行うことができます。

第1条の3ー1項3号

行政書士が作成することができる契約その他に関する書類を代理人として作成すること。

行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、その作成することができる契約その他に関する書類を、代理人として作成することができます。そのため、契約文言の修正記載等を行うことができると言われています。また、争訟性のないものについては、一般私人間の契約であっても、代理人として交渉、契約締結できます。

第1条の3ー1項4号

行政書士が作成することができる書類の作成について相談に応ずること。

行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、その作成することができる書類の作成について、相談に応じることができます。あくまで、”書類作成において”の相談のため、「法律相談」はできませんので注意が必要です。(弁護士法72条)

第1条の4

第一条の四 前二条の規定は、行政書士が他の行政書士又は行政書士法人(第十三条の三に規定する行政書士法人をいう。第八条第一項において同じ。)の使用人として前二条に規定する業務に従事することを妨げない。

これは、”雇われ行政書士”についての条文です。2003年の行政書士法改正により、追加されました。注意点としては、使用人行政書士は自ら依頼を受けるのではなく、雇用行政書士や行政書士法人が受任した業務に関して、その指導下で従事するということです。

さいごに

今回の記事では、行政書士法の第1条の3および第1条の4について解説しました。

第1条の3では、行政書士が他人の依頼を受けて報酬を得る業務について具体的に規定されています。この条文により、行政書士は官公署への書類提出手続きや、不服申立て手続きの代理、契約書の作成など、多岐にわたる業務を行うことができます。特に、不服申立て手続きについては、特定の研修を修了した特定行政書士にのみ許可されるなど、業務の質と専門性が求められています。

第1条の4では、雇われ行政書士(使用人行政書士)について規定されています。この条文により、行政書士法人や他の行政書士の指導の下で業務を行う使用人行政書士の役割が明確化されています。

これらの条文は、行政書士としての業務範囲と責任を明確にし、依頼者に対する適切なサービス提供を支える基盤となっています。


参考文献
・第13版 行政書士法 コンメンタール:兼子 仁 著(北樹出版)
・伊藤塾 行政書士実務講座 入門マスター 行政書士法等 テキスト