行政書士法:第2条(資格)/第2条の2(欠格事由)

令和6年から行政書士試験が大きく変わります。たとえば、「一般知識等」が「基礎知識」に変更され、試験科目として「行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令」が追加されます。
「行政書士法」は、行政書士の制度が定められた法律です。目的、業務、資格、懲戒などが規定されています。行政書士として業務を行うならば、必ず知っておかなくてはならない法律です。私も令和5年行政書士試験合格後から、書籍を購入して行政書士法について勉強してきました。そして理解をさらに深めるために記事にまとめていくことにしました。
今回は、「第2
資格/第2条の2 欠格事由」についてまとめます。

目次

第2条

第二条 次の各号のいずれかに該当する者は、行政書士となる資格を有する
一 行政書士試験に合格した者
二 弁護士となる資格を有する者
三 弁理士となる資格を有する者
四 公認会計士となる資格を有する者
五 税理士となる資格を有する者
六 国又は地方公共団体の公務員として行政事務を担当した期間及び行政執行法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第四項に規定する行政執行法人をいう。以下同じ。)又は特定地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第二項に規定する特定地方独立行政法人をいう。以下同じ。)の役員又は職員として行政事務に相当する事務を担当した期間が通算して二十年以上(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)による高等学校を卒業した者その他同法第九十条に規定する者にあつては十七年以上)になる者

第2条では、行政書士になることができる者について書かれています。大きく分けると、以下のとおりです。

  1. 行政書士試験に合格した者
  2. 弁護士などの他の資格を有する者
  3. 行政事務担当経験20年以上の公務員(高等学校を卒業した者は、17年以上)

では、それぞれ確認していきましょう。

① 行政書士試験に合格した者

行政書士の業務を行う者の知識や能力を担保するため、原則として行政書士試験に合格しなければいけません。
こちらの記事行政書士試験についてまとめていますので、ご覧ください。
行政書士試験の概要と対策

なお、もちろん行政書士試験に合格しただけでは、行政書士と名乗ることはできません。日本行政書士会連合会に登録し、同時に都道府県行政書士会に入らなければ、行政書士として業務を行うことはできません。つまり、この資格要件は、日本行政書士会連合会に登録するための必要条件なのです。

② 弁護士などの他の資格を有する者

下記の資格を有している者は、自動的に行政書士となる資格を有することとされています。

 弁護士   弁理士   公認会計士   税理士

この4士業が認められている理由としては、業務内容の共通性や試験の難易度から、これらの4士業の者が行政書士の業務を行うことができる能力を有していると認められているからです。
なお、これらの4士業の者が、行政書士として業務を行うためには、行政書士登録をする必要があります。この点は、弁護士資格者でも同様であって、弁護士登録者が当然に弁理士や税理士の業務ができる(弁護士法3条2項)のとは異なるので注意が必要です。

▷参考:弁護士法3条2項
(弁護士の職務)
第三条 2 弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる。

また、自動的に行政書士となる資格は上記の4士業に限られており、以下の者は含まれないため、注意が必要です。

 司法書士   社会保険労務士   土地家屋調査士   不動産鑑定士など

③ 行政事務担当経験20年以上の公務員

これは、公務員についての規定です。公務員については、自らの職務として文書の立案作成、審査等を行う事務に20年以上(高等学校卒業した者は17年以上)従事した者は、行政書士業務である官公署に提出する書類の作成に相当精通している者として、行政書士の資格を有する者として取り扱うこととされています。それぞれ条文中の言葉について確認していきましょう。

国又は地方公共団体の公務員とは?
これは、国家公務員法・地方公務員法での「国家公務員」・「地方公務員」のことを指します。一般職や特別職、常勤や非常勤などの別は問わないと解されています。

行政事務とは?
これは、文書の立案審査、あるいはこれに関連する事務であって、ある程度本人の責任において処理するような事務と解されています。そのため、単純労務や事務補助などの職務はこれに該当しないと言われています。なお、行政事務の担当年数の計算は、民法138条以下に従うが、不継続期間については、365日を1年、それ未満の日数は、30日を1ヶ月、12ヶ月を1年とするとされています。

また、行政書士登録申請の際は、公務員職歴証明書の提出が必要です。この公務員職歴証明書は、勤務していた官公庁が作成する書面で、文書立案や文書作成などの職務に従事した期間が経験年数として計上されます。

その他

以上が行政書士になることができる者の資格についてです。つまり、日本国籍の有無は資格要件ではないため、外国人の方も行政書士になることができます。

第2条の2

第二条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、前条の規定にかかわらず、行政書士となる資格を有しない
一 未成年者
二 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
三 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつてから三年を経過しない者
四 公務員(行政執行法人又は特定地方独立行政法人の役員又は職員を含む。)で懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から三年を経過しない者
五 第六条の五第一項の規定により登録の取消しの処分を受け、当該処分の日から三年を経過しない者
六 第十四条の規定により業務の禁止の処分を受け、当該処分の日から三年を経過しない者
七 懲戒処分により、弁護士会から除名され、公認会計士の登録の抹消の処分を受け、弁理士、税理士、司法書士若しくは土地家屋調査士の業務を禁止され、又は社会保険労務士の失格処分を受けた者で、これらの処分を受けた日から三年を経過しないもの
八 税理士法(昭和二十六年法律第二百三十七号)第四十八条第一項の規定により同法第四十四条第三号に掲げる処分を受けるべきであつたことについて決定を受けた者で、当該決定を受けた日から三年を経過しないもの

第2条の2では、行政書士になれない者について書かれています。この条項に当てはまった者は、2条の資格条項の規定に関わらず、行政書士となることはできません。では、それぞれ確認していきましょう。

未成年者とは?

2022年(令和4年)から満18歳未満となった未成年者は、民法で一般的に行為能力を制限されているため、行政書士の業務能力を欠くとされています。

民法
(成年)
第四条 年齢十八歳をもって、成年とする。
(未成年者の法律行為)
第五条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
(未成年者の営業の許可)
第六条 一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。
2 前項の場合において、未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは、その法定代理人は、第四編(親族)の規定に従い、その許可を取り消し、又はこれを制限することができる。

行政書士試験は、未成年者でも受験できますが、行政書士の資格を得て登録するのは成年になってからということになります。

破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者とは?

破産者(破産手続開始決定を受けた者)は、その財産法律行為を原則的に制限されますが、以下の方法によって、行為能力が一般的に回復されます。

  • 法定の当然復権
  • 申立てに基づく裁判所の復権決定

そして、この復権のない破産者は、基本的に法律専門職の欠格者と規定されていることが多く、行政書士法でも欠格者となっています。

禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつてから三年を経過しない者とは?

行政書士の欠格者とされているのは、「禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり3年を経過しない者」です。「禁錮以上の刑に処せれた者」とは、禁錮以上の刑(懲役刑など)の有罪判決が確定した人を指しており、実刑だけでなく執行猶予づきの場合も含まれます。なお、刑の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失います。(刑法27条)また、実刑に服しまたはそれを免除されて無事10年経過した場合も、同様に資格回復すると解されています。

公務員(行政執行法人又は特定地方独立行政法人の役員又は職員を含む。)で懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から三年を経過しない者

「公務員で懲戒免職の処分を受けた」とは、一般職の行政公務員では公務員法に基づく懲戒免職処分のことを指しますが、特別職や行政執行法人等の役員ではその服務違反を理由とする解任の処分を実質上の「懲戒免職処分」と解されています。

第六条の五第一項の規定により登録の取消しの処分を受け、当該処分の日から三年を経過しない者

行政書士法
第六条の五 日本行政書士会連合会は、行政書士の登録を受けた者が、偽りその他不正の手段により当該登録を受けたことが判明したときは、当該登録を取り消さなければならない

行政書士が日本行政書士会連合会から不正登録の取消処分を受けて、3年経過していない者は行政書士となることができません。

第十四条の規定により業務の禁止の処分を受け、当該処分の日から三年を経過しない者

行政書士法
第十四条 行政書士が、この法律若しくはこれに基づく命令、規則その他都道府県知事の処分に違反したとき又は行政書士たるにふさわしくない重大な非行があつたときは、都道府県知事は、当該行政書士に対し、次に掲げる処分をすることができる。
一 戒告
二 二年以内の業務の停止
三 業務の禁止

行政書士が都道府県知事から業務禁止処分をされて、3年経過していない者は行政書士となることができません。

懲戒処分により、弁護士会から除名され、公認会計士の登録の抹消の処分を受け、弁理士、税理士、司法書士若しくは土地家屋調査士の業務を禁止され、又は社会保険労務士の失格処分を受けた者で、これらの処分を受けた日から三年を経過しないもの

これは他士業での処分を受けた者が、その処分をされて、3年経過していない場合の欠格事由です。

税理士法(昭和二十六年法律第二百三十七号)第四十八条第一項の規定により同法第四十四条第三号に掲げる処分を受けるべきであつたことについて決定を受けた者で、当該決定を受けた日から三年を経過しないもの

2022年(令和4年)の改正によって、この8号が新設されました。税理士法48条1項に基づく、懲戒処分を受けるべきであったという決定に関する税理士の特例を定めています。

さいごに

今回の記事では、行政書士法の第2条および第2条の2について解説しました。

第2条では、行政書士になることができる者について書かれていました。総務省の資料によると、行政書士として登録した者のうち、行政書士試験合格者が約72%を占めており、大半の行政書士が試験合格者だということがわかります。

第2条の2では、行政書士になれない者について書かれていました。他士業の被処分者も含まれている点に注意が必要ですね。


参考文献
・第13版 行政書士法 コンメンタール:兼子 仁 著(北樹出版)
・伊藤塾 行政書士実務講座 入門マスター 行政書士法等 テキスト