行政書士法:第3条~第4条の19(行政書士試験)

令和6年から行政書士試験が大きく変わります。たとえば、「一般知識等」が「基礎知識」に変更され、試験科目として「行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令」が追加されます。
「行政書士法」は、行政書士の制度が定められた法律です。目的、業務、資格、懲戒などが規定されています。行政書士として業務を行うならば、必ず知っておかなくてはならない法律です。私も令和5年行政書士試験合格後から、書籍を購入して行政書士法について勉強してきました。そして理解をさらに深めるために記事にまとめていくことにしました。
今回は、「第3
~ 第4条の19 行政書士試験」についてまとめます。

第3条

第三条 行政書士試験は、総務大臣が定めるところにより、行政書士の業務に関し必要な知識及び能力について、毎年一回以上行う。
2 行政書士試験の施行に関する事務は、都道府県知事が行う。

第3条からは、行政書士試験について書かれています

悲願の国家資格化

この行政書士法が初めて定められた1951年の行政書士試験は、都道府県知事が行う国の機関委任事務であり、合格後の資格は、その都道府県の区域内だけで通用するものでした。このままでは、行政書士の目的である国民の権利利益を保障することはできないとして、行政書士団体は国家試験化の要望をしていました。そして、1983年の改正で、国家試験化が実現しました。行政書士試験合格証には、総務大臣と都道府県知事との共同署名・公印が表示されており、国家資格性が象徴されています。

行政書士試験の法的しくみ

  • 国・総務大臣:試験科目編成などの試験制度の根幹を定める
  • 都道府県知事:試験の施行に関する事務を行う

なお、第4条以降において、国指定の法人・指定試験機関についての定めがあり、全都道府県からこの機関に事務委任する方式が定められています。これにより、行政書士試験が国家試験にふさわしい実体の試験制度であると言えます。

第4条

第四条 都道府県知事は、総務大臣の指定する者(以下「指定試験機関」という。)に、行政書士試験の施行に関する事務(総務省令で定めるものを除く。以下「試験事務」という。)を行わせることができる。
2 前項の規定による指定は、総務省令で定めるところにより、試験事務を行おうとする者の申請により行う。
3 都道府県知事は、第一項の規定により指定試験機関に試験事務を行わせるときは、試験事務を行わないものとする。

指定試験機関にほとんどの試験事務が委任されていますが、第4条1項で総務省令で定めるとされた試験の「合格決定」についての事務は、都道府県が行うものとされています。なお、この都道府県知事から指定機関への委任の形は、都道府県知事からの公的通知でいいと解されています。

そして、この指定試験機関は、現在の「一般財団法人 行政書士試験研究センター」です。

行政書士法で定められている試験制度とは?

  • 指定試験機関の指定・監督
  • 都道府県からの指定試験機関への事務委任
  • 試験委員
  • 試験事務規定
  • 試験の手数料
  • 試験事務処分の審査請求

行政書士法施行規則(総務省令)で定められている試験制度とは?

  • 試験事務の範囲
  • 試験委員の要件・選任届出等
  • 試験事務規程の記載事項と許可
  • 試験結果の報告

行政書士試験の施行に関する定めで定められている試験制度とは?

  • 試験期日
  • 試験科目・試験の方法
  • 合格発表
  • 合格証
  • 不正行為者処分
  • 肢体不自由者特例措置
  • 試験の公示

その他の試験の細かい部分については、一般財団法人 行政書士試験研究センターが必要に応じて定めるとされています。

第4条の2・第4条の3・第4条の4・第4条の5

第四条の二 総務大臣は、前条第二項の規定による申請が次の要件を満たしていると認めるときでなければ、同条第一項の規定による指定をしてはならない。
一 職員、設備、試験事務の実施の方法その他の事項についての試験事務の実施に関する計画が試験事務の適正かつ確実な実施のために適切なものであること。
二 前号の試験事務の実施に関する計画の適正かつ確実な実施に必要な経理的及び技術的な基礎を有するものであること。
三 申請者が、試験事務以外の業務を行つている場合には、その業務を行うことによつて試験事務が不公正になるおそれがないこと。
2 総務大臣は、前条第二項の規定による申請をした者が、次の各号のいずれかに該当するときは、同条第一項の規定による指定をしてはならない。
一 一般社団法人又は一般財団法人以外の者であること。
二 第四条の十四第一項又は第二項の規定により指定を取り消され、その取消しの日から起算して二年を経過しない者であること。
三 その役員のうちに、次のいずれかに該当する者があること。
イ この法律に違反して、刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して二年を経過しない者
ロ 第四条の五第二項の規定による命令により解任され、その解任の日から起算して二年を経過しない者

第四条の三 総務大臣は、第四条第一項の規定による指定をしたときは、当該指定を受けた者の名称及び主たる事務所の所在地並びに当該指定をした日を公示しなければならない。
2 指定試験機関は、その名称又は主たる事務所の所在地を変更しようとするときは、変更しようとする日の二週間前までに、その旨を総務大臣に届け出なければならない。
3 総務大臣は、前項の規定による届出があつたときは、その旨を公示しなければならない。

第四条の四 第四条第一項の規定により指定試験機関にその試験事務を行わせることとした都道府県知事(以下「委任都道府県知事」という。)は、当該指定試験機関の名称、主たる事務所の所在地及び当該試験事務を取り扱う事務所の所在地並びに当該指定試験機関に試験事務を行わせることとした日を公示しなければならない。
2 指定試験機関は、その名称、主たる事務所の所在地又は試験事務を取り扱う事務所の所在地を変更しようとするときは、委任都道府県知事(試験事務を取り扱う事務所の所在地については、関係委任都道府県知事)に、変更しようとする日の二週間前までに、その旨を届け出なければならない。
3 委任都道府県知事は、前項の規定による届出があつたときは、その旨を公示しなければならない。

第四条の五 指定試験機関の役員の選任及び解任は、総務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
2 総務大臣は、指定試験機関の役員が、この法律(この法律に基づく命令又は処分を含む。)若しくは第四条の八第一項の試験事務規程に違反する行為をしたとき、又は試験事務に関し著しく不適当な行為をしたときは、指定試験機関に対し、その役員を解任すべきことを命ずることができる。

ここでは、指定の基準や公示、委任の公示、役員の選任及び解任について書かれています。

第4条の6・第4条の7

第四条の六 指定試験機関は、総務省令で定める要件を備える者のうちから行政書士試験委員(以下「試験委員」という。)を選任し、試験の問題の作成及び採点を行わせなければならない。
2 指定試験機関は、試験委員を選任し、又は解任したときは、遅滞なくその旨を総務大臣に届け出なければならない。
3 前条第二項の規定は、試験委員の解任について準用する。
第四条の七 指定試験機関の役員若しくは職員(試験委員を含む。第三項において同じ。)又はこれらの職にあつた者は、試験事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
2 試験委員は、試験の問題の作成及び採点について、厳正を保持し不正の行為のないようにしなければならない。
3 試験事務に従事する指定試験機関の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
ここでは、試験委員や指定試験機関の役員等の秘密を守る義務などについて書かれています。

試験委員の資格とは?

試験委員は、行政書士試験の出題や採点をしいます。この試験委員の資格要件は第4条の6第1項に基づいて、行政書士法施行規則で以下の通りに規定されています。
  • 大学において法学に関する科目を担当する教授若しくは准教授の職にある者又はあった者
  • 上記の者と同等以上の知識及び経験を有する者

そして、試験委員の選任は行政書士試験研究センターによって行われ、総務大臣に届けられます。

試験委員の編成とは?

試験委員は8人以上で、科目に応じてセンター理事長から選任されます。そして、試験問題や採点方針の決定は、試験委員会で行われます。

第4条の8・第4条の9・第4条の10

第四条の八 指定試験機関は、総務省令で定める試験事務の実施に関する事項について試験事務規程を定め、総務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 指定試験機関は、前項後段の規定により試験事務規程を変更しようとするときは、委任都道府県知事の意見を聴かなければならない。
3 総務大臣は、第一項の規定により認可をした試験事務規程が試験事務の適正かつ確実な実施上不適当となつたと認めるときは、指定試験機関に対し、これを変更すべきことを命ずることができる。第四条の九 指定試験機関は、毎事業年度、事業計画及び収支予算を作成し、当該事業年度の開始前に(第四条第一項の規定による指定を受けた日の属する事業年度にあつては、その指定を受けた後遅滞なく)、総務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

2 指定試験機関は、事業計画及び収支予算を作成し、又は変更しようとするときは、委任都道府県知事の意見を聴かなければならない。
3 指定試験機関は、毎事業年度、事業報告書及び収支決算書を作成し、当該事業年度の終了後三月以内に、総務大臣及び委任都道府県知事に提出しなければならない。第四条の十 指定試験機関は、総務省令で定めるところにより、試験事務に関する事項で総務省令で定めるものを記載した帳簿を備え、保存しなければならない。

ここでは、試験事務規定や事業計画、試験事務に関する帳簿の備付けや保存について書かれています。
第4条の10に基づいて、総務省令の定めによって、行政書士試験研究センターが永久保存しておくべき試験事務に関する帳簿に記載する事項は、以下のものとされています。
  • 試験地・期日
  • 得点付き受検者名簿

第4条の11 ~ 第4条の17

第四条の十一 総務大臣は、試験事務の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、指定試験機関に対し、試験事務に関し監督上必要な命令をすることができる。
2 委任都道府県知事は、その行わせることとした試験事務の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、指定試験機関に対し、当該試験事務の適正な実施のために必要な措置をとるべきことを指示することができる。第四条の十二 総務大臣は、試験事務の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、指定試験機関に対し、試験事務の状況に関し必要な報告を求め、又はその職員に、指定試験機関の事務所に立ち入り、試験事務の状況若しくは設備、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。

2 委任都道府県知事は、その行わせることとした試験事務の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、指定試験機関に対し、当該試験事務の状況に関し必要な報告を求め、又はその職員に、当該試験事務を取り扱う指定試験機関の事務所に立ち入り、当該試験事務の状況若しくは設備、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
3 前二項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
4 第一項又は第二項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。第四条の十三 指定試験機関は、総務大臣の許可を受けなければ、試験事務の全部又は一部を休止し、又は廃止してはならない。
2 総務大臣は、指定試験機関の試験事務の全部又は一部の休止又は廃止により試験事務の適正かつ確実な実施が損なわれるおそれがないと認めるときでなければ、前項の規定による許可をしてはならない。
3 総務大臣は、第一項の規定による許可をしようとするときは、関係委任都道府県知事の意見を聴かなければならない。
4 総務大臣は、第一項の規定による許可をしたときは、その旨を、関係委任都道府県知事に通知するとともに、公示しなければならない。

第四条の十四 総務大臣は、指定試験機関が第四条の二第二項第一号又は第三号に該当するに至つたときは、その指定を取り消さなければならない。
2 総務大臣は、指定試験機関が次の各号のいずれかに該当するときは、その指定を取り消し、又は期間を定めて試験事務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。
一 第四条の二第一項各号の要件を満たさなくなつたと認められるとき。
二 第四条の六第一項、第四条の九第一項若しくは第三項、第四条の十又は前条第一項の規定に違反したとき。
三 第四条の五第二項(第四条の六第三項において準用する場合を含む。)、第四条の八第三項又は第四条の十一第一項の規定による命令に違反したとき。
四 第四条の八第一項の規定により認可を受けた試験事務規程によらないで試験事務を行つたとき。
五 不正な手段により第四条第一項の規定による指定を受けたとき。
3 総務大臣は、前二項の規定により指定を取り消し、又は前項の規定により試験事務の全部若しくは一部の停止を命じたときは、その旨を、関係委任都道府県知事に通知するとともに、公示しなければならない。

第四条の十五 委任都道府県知事は、指定試験機関に試験事務を行わせないこととするときは、その三月前までに、その旨を指定試験機関に通知しなければならない。
2 委任都道府県知事は、指定試験機関に試験事務を行わせないこととしたときは、その旨を公示しなければならない。

第四条の十六 委任都道府県知事は、指定試験機関が第四条の十三第一項の規定により試験事務の全部若しくは一部を休止したとき、総務大臣が第四条の十四第二項の規定により指定試験機関に対し試験事務の全部若しくは一部の停止を命じたとき、又は指定試験機関が天災その他の事由により試験事務の全部若しくは一部を実施することが困難となつた場合において総務大臣が必要があると認めるときは、第四条第三項の規定にかかわらず、当該試験事務の全部又は一部を行うものとする。
2 総務大臣は、委任都道府県知事が前項の規定により試験事務を行うこととなるとき、又は委任都道府県知事が同項の規定により試験事務を行うこととなる事由がなくなつたときは、速やかにその旨を当該委任都道府県知事に通知しなければならない。
3 委任都道府県知事は、前項の規定による通知を受けたときは、その旨を公示しなければならない。

第四条の十七 前条第一項の規定により委任都道府県知事が試験事務を行うこととなつた場合、総務大臣が第四条の十三第一項の規定により試験事務の廃止を許可し、若しくは第四条の十四第一項若しくは第二項の規定により指定を取り消した場合又は委任都道府県知事が指定試験機関に試験事務を行わせないこととした場合における試験事務の引継ぎその他の必要な事項は、総務省令で定める。

ここでは、監督命令等や報告の徴収及び立入検査、指定の取り消し等、委任の撤回の通知などについて書かれています。第4条の11から第4条の17までは、異例の事態を想定した定めです。実際には、総務省と都道府県から行政書士試験研究センターへの連絡・協議・指導で、防ぐことができるとされています。

第4条の18・第4条の19

第四条の十八 指定試験機関が行う試験事務に係る処分又はその不作為については、総務大臣に対し、審査請求をすることができる。この場合において、総務大臣は、行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)第二十五条第二項及び第三項、第四十六条第一項及び第二項、第四十七条並びに第四十九条第三項の規定の適用については、指定試験機関の上級行政庁とみなす。

第四条の十九 都道府県は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百二十七条の規定に基づき行政書士試験に係る手数料を徴収する場合においては、第四条第一項の規定により指定試験機関が行う行政書士試験を受けようとする者に、条例で定めるところにより、当該手数料を当該指定試験機関へ納めさせ、その収入とすることができる。

第五条 削除

第4条の18では、指定試験機関がした処分等に係る審査請求について、第4条の19では手数料について書かれています。

さいごに

今回の記事では、行政書士法の第3条~第4条の19について紹介しました。ここでは、行政書士試験について、また試験事務を行う行政書士試験研究センターについて規定されていました。


参考文献
・第13版 行政書士法 コンメンタール:兼子 仁 著(北樹出版)
・伊藤塾 行政書士実務講座 入門マスター 行政書士法等 テキスト