日本語教師が解説!日本語能力試験(JLPT)とは?

日本語能力試験とは?

「日本語能力試験って何?」そんな疑問に日本語教師がお答えします!
外国人の方が日本で働く際に、日本語の試験を受けることが多いと思います。この「日本語能力試験」は日本語の試験の中で最も有名な試験です。今回は、「日本語能力試験」について解説します。

日本語能力試験(JLPT)とは?

日本語能力試験(Japanese Language Proficiency Test, JLPT)は、日本語を母語としない人の日本語能力を測定し認定する試験です。1984年に始まり、現在では世界中で実施されています。開始当初の受験者数は全世界で7,000人ほどでしたが、2023年には全世界で148万人が応募しており、受験者数は増加傾向にあります。
▷参照:データで見る日本語能力試験

3つの特徴

①課題遂行のための言語コミュニケーション能力が測れる。
日本語能力試験で大切だと考えられていること
1.日本語の文字や語彙、文法についてどのぐらい知っているか
2.その知識を利用してコミュニケーション上の課題を遂行できるかどうして1.や2.が大切?
私たちが生活の中で行っている様々な「課題」のうち、言語を必要とするものを遂行するためには、言語知識だけでなく、それを実際に利用する力も必要だから。

日本語能力試験では何がわかる?
言語知識」:1.を測るため
読解」、「聴解」:2.を測るため
以上の3つの要素により、総合的に日本語のコミュニケーション能力が測れる。

②5段階のレベルから、自分に合ったレベルが選べる
日本語能力試験には、5段階(N1、N2、N3、N4、N5)のレベルがあります。できるだけきめ細かく日本語能力を測るために、以下のように試験問題はレベルごとに作られています。

N4・N5

主に教室内で学ぶ基本的な日本語がどのくらい理解できているかが測れます。N1・N2
現実の生活の幅広い場面で使われる日本語がどのくらい理解できるかを測ります。

N3
N4、N5からN1、N2への橋渡しのレベルです。

③尺度得点で日本語能力をより正確に測れます。
尺度得点とは?
受験者の日本語能力と試験結果(得点)を、より公平に対応づけるため、共通の尺度(ものさし)に基づいて表示した得点で す。 尺度得点を利用することで、いつの試験を受験したかにかかわらず、常に同一の基準の下で日本語能力を測定することが可能になりました。

JLPTのレベルと難易度

JLPTはN1からN5までの5つのレベルがあります。N1が最も難しく、N5が最も易しいです。

それぞれのレベルで必要な語彙や文法、読解・聴解のスキルが異なります。各レベルの詳細は以下の通りです。
また、大規模試験のため、解答は選択枝によるマークシート方式で行われています。話したり書いたりする能力を直接測る試験科目はありません

N 1

高度な日本語を理解できるレベルで、専門的な文章や講義も理解可能です。日本国内外での認定率は約34%です。

N 2

幅広い場面で使われる日本語をある程度理解でき、ビジネスの場でも通用します。認定率は約42%です。

N 3

日常的な場面で使われる日本語を理解でき、製造業などでの就職に有利です。認定率は約44%です。

N 4

基本的な日本語を理解でき、人手不足が深刻な産業での就職に役立ちます。認定率は約43%です。

N 5

基本的な日本語をある程度理解できるレベルです。認定率は約51%です。

JLPTの重要性と企業の視点

企業がJLPTを重視する理由はいくつかあります。

  • コミュニケーション能力の保証: JLPTの取得者は、日本語でのコミュニケーション能力が確保されていると見なされ、業務やチームワークが円滑に進むことが期待できます。
  • 法的要件の充足: 特定の職種や業種では、法的にJLPTの特定のレベルを要求される場合があります(例:看護師、技術者など)。
  • 教育水準の証明: JLPTの取得は、外国人の日本語教育の質を示す重要な指標となります。企業が教育プログラムの信頼性を評価する際に有用です。

JLPTを受験するメリット

  1. 日本での就職に有利
    JLPTの資格を持つことで、日本語力を企業にアピールできます。特にN3以上の取得は広い職種で有利です。
  2. 在留資格「特定技能」の申請
    N4以上の認定で在留資格「特定技能」の申請が可能になります。特定技能制度は人手不足が深刻な産業分野で外国人を受け入れるための制度です。
  3. 高度人材ポイント制の加点
    N1取得者は15点、N2取得者は10点が高度人材ポイントに加算されます。これにより、在留資格「高度専門職」を取得しやすくなります。

JLPTの準備と対策

JLPTの試験対策は、個人の学習スタイルや目標に応じて異なりますが、一般的な準備方法としては以下のようなものがあります:

  • 模擬試験の受験: 実際の試験形式に慣れるために、模擬試験を受けることが推奨されます。
  • 文法・語彙の徹底: 各レベルごとに必要な文法ポイントや語彙を網羅的に学習します。
  • リスニングの練習: 日本語のリスニング能力を高めるために、日常会話やニュース番組などのリスニング練習が役立ちます。
  • 読解の練習: 複雑な文章を理解し、要点を抽出する能力を高めるために、多読や速読の練習が重要です。

合格のポイントとなるのは、「読解」と「聴解」です。「読解」は苦手な方が多いので、練習問題集などを使用して、繰り返し問題を解いて、慣れることが必要です。

JLPTの受験方法と費用

国内での受験方法
日本での受験費用は7,500円(税込)です。ウェブサイトから申し込み、試験は7月と12月に実施されます。
▷参考:日本語能力試験 申込みページ

海外での受験方法
海外での受験費用は国によって異なります。各国の実施機関に問い合わせて確認してください。

その他の日本語能力試験

JLPT以外にも、日本語能力を証明する試験があります。例えば、JPT日本語能力試験やBJTビジネス日本語能力テストなどがあります。それぞれの試験には異なる特徴や評価基準がありますので、自分の目的に合った試験を選ぶと良いでしょう。

さいごに

日本語能力試験(JLPT)は、外国人労働者が日本でのキャリアを築く上で不可欠な資格です。企業がJLPTを重視する理由や、試験の内容・レベル、効果的な対策方法について理解することで、適切な人材の選定や教育プログラムの評価に役立てることができます。外国人採用を考える企業にとって、JLPTは日本語教育とビジネスの架け橋となる重要な要素であることを理解することが肝要です。


なお、当事務所の代表は日本語教師歴10年以上の経験を持ち、日本語研修やマナー研修を行うことが可能です。外国人労働者の方々が円滑に業務に取り組めるよう、お手伝いできればと考えております。ご依頼やご相談は、下記のページをご覧ください。