閣議決定の内容を要約!特定技能制度の変更とその影響

育成就労とは?

令和6(2024)年3月29日、日本政府は特定技能制度に関する重要な改正案を閣議決定しました。これにより、特定技能の受入れ見込数の再設定対象分野の追加が行われ、日本の外国人労働者政策に大きな変化がもたらされることとなります。

特定技能制度の概要

特定技能制度は、特定の分野における人材不足を補うために設けられた制度です。特定技能1号と2号の在留資格を設け、それぞれに応じた技能試験と日本語試験に合格した外国人労働者を受け入れます。これにより、労働力不足が深刻な分野における即戦力となる外国人材を確保します。
▷参考:「在留資格:特定技能とは?」

特定技能については、上記の記事をご覧ください。

閣議決定の内容とは?

では、閣議決定の内容をそれぞれ見ていきましょう。

1. 受入れ見込数の再設定について

特定技能制度では、各分野ごとに5年間の受入れ見込数を設定し、経済情勢の変化を考慮して受入れ上限を運用してきました。今回の改定では、令和6年4月からの次の5年間にわたって各分野の受入れ見込数を再調整しました。これにより、特に人手不足が深刻な分野での外国人労働者の受入れがさらに増加する見込みです。

受け入れ見込み数再設定

各分野 以前の受入れ見込み数 令和6年4月から5年間の受入れ見込数
介護 50,900 135,000
ビルクリーニング 20,000 37,000
工業製品製造業(※1 49,750 173,300
建設 34,000 80,000
造船・舶用工業 11,000 36,000
自動車整備 6,500 10,000
航空 1,300 4,400
宿泊 11,200 23,000
農業 36,500 78,000
漁業 6,300 17,000
飲食料品製造業 87,200 139,000
外食業 30,500 53,000
自動車運送業(※2 24,500
鉄道(※2 3,800
林業(※2 1,000
木材産業(※2 5,000
合計 345,150 820,000

※1 工業製品製造業:これまでは、「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」でしたが、業種を追加して「工業製品製造業」に変更されます。なお、新規追加業種では1号特定技能外国人のみ受入れ可能となります。

※2 自動車運送業、鉄道、林業、木材産業:新たに追加される分野です。1号特定技能外国人のみ受入れ可能となります。

受入れ見込数の拡大に伴い、政府は受入れ企業に対し、外国人労働者との共生社会の実現に向けた環境整備を促進する責務を負うことを明記しました。これにより、地域社会における外国人の受け入れがより円滑に進むことが期待されます。

2. 対象分野の追加について

特定技能制度の対象分野においても大幅な変更が行われました。現在の12分野から、16分野に変更となります。以下の分野が新たに追加されることとなりました。

  • 自動車運送業
  • 鉄道
  • 林業
  • 木材産業

また、既存の分野にも新たな業務が追加され、次の3つの分野で拡充されることとなりました。

  • 工業製品製造業分野 ←(旧)素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野
    分野名が「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」から「工業製品製造業」に変更される。業種が追加されるが、新規追加業種では1号特定技能外国人のみ受入れ可能となる。
  • 造船・舶用工業分野
    区分を整理し、造船・舶用工業に必要となる各種作業が新区分に追加される。新区分でも2号特定技能外国人が受入れ可能となる。 
  • 飲食料品製造業分野
    食料品スーパーマーケットにおける惣菜等の製造も可能となる。新たな業務においても2号特定技能外国人が受入れ可能となる。

これに伴い、各分野の業務範囲が再編され、特定技能外国人の受入れが可能となる具体的な条件が定められました。

新規追加分野と業務内容

新たに追加される分野の主な業務内容は以下のとおりです。

  • 自動車運送業:バス運転者、タクシー運転者、トラック運転者
  • 鉄道:運輸係員(運転士・車掌、駅係員)、軌道整備、電気設備整備、車両製造、車両整備
  • 林業:育林、素材生産、林業種苗育成など
  • 木材産業:製材業、合板製造業など

上記の新規分野においても、特定技能1号には「相当程度の知識又は経験を必要とする技能」及び「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有することを基本としつつ、特定産業分野ごとに業務上必要な日本語能力水準」が求められ、技能水準及び日本語能力に係る各種試験が課されます。
基本的に、日本語能力試験 N4以上が求められますが、下記の業務についてはN3以上が求められます。

日本語能力試験 N3以上
バス運転者、タクシー運転者、運輸係員(運転士、車掌、駅係員)

自動車運送業分野の独自要件とは?

自動車運送業においては、日本の運転免許の取得等※3)が必須となっています。そのため、運転免許を取得するまでの期間は、下記のように他の在留資格での活動が認められるようです。ただし、運転免許を取得していないので、運転免許が必要な業務には従事できませんので、注意してください。

【日本国内で運転免許を取得するまでの在留資格】
在留資格「特定活動
・バス運転者、タクシー運転者:在留期間1年(更新不可)
・トラック運転者:在留期間6月(更新不可)

※3 日本の運転免許の取得等とは?
・バス運転者、タクシー運転者:外免切替(※4)および第二種免許の取得+新任運転者研修の修了
・トラック運転者:外免切替(※4

※4 外免切替(がいめんきりかえ)とは?
外免切替とは、外国の運転免許証を日本の運転免許証に切り替える手続きのこと。有効な外国の運転免許証を持ち、免許取得国で3ヶ月以上の滞在歴がある人が対象となる。免許証が有効期限切れの場合は切り替えできない。

さいごに

これらの改正により、日本の特定技能制度はさらに柔軟性を持ち、経済成長に不可欠な人材を効果的に確保する体制を整えることが期待されます。しかしながら、適切な受入れ企業の責任環境整備の必要性も強調され、地域社会との調和を図りながら制度が運用されていくことが重要です。