はじめての建設業許可:行政書士の建設業業務とは?

建設業とは?

建設業許可申請の勉強を1か月ほどしています。とても難しいですが、まだまだニーズのある分野だと思うので、事務所のメイン業務とするためにも、もっと勉強を続けようと思います。これまで学んだことをアウトプットするために、少しずつ記事をアップしていきたいと思います。今回は、建設業業務の総論です。

うつのみや
この記事は、こんな方におすすめ!
・はじめて建設業許可の申請をしたい方
・建設業許可に興味がある方

建設業の許可とは?

建設業法では、建設業を営む事業者について、「建設業の許可」を取得しなければならないと規定されています(ただし、軽微な工事を施工する場合は除かれます)。どうして許可が必要なのでしょうか?

信頼性の劣る設計や施工によって、工作物の安全性が欠如し、また取引の安全が損なわれることで、国民の身体の安全や発注者の利益が侵害されることを防止するために、許可が必要なのです。

建設業の許可を受けている事業者は、令和6年3月末時点で、479,383業者です。他にも許可を受けていない事業者も多数あります。国内の事業者の中で、建設業者が最も事業者数が多いと言われています。

行政書士にとって建設業業務とは?

行政書士の主力業務と言われている建設業業務ですが、どうして主力となるのでしょうか?以下の理由が考えられます。

・事業者数が多いこと
・許可に更新があること
・許可制度にかかる手続きの根拠が法律以外にもあること(例:許可事務ガイドラインなど)
・建設業が営む事業に段階的な発展性があること(例:一般建設業許可→特定建設業許可)
・行政書士が事業者に法令等について適切なアドバイスをする機会が多いこと

行政書士に求められることは、最新の法令等の改正情報を常に意識して、事業者のフォローをすることです。どの業務でも同じですが、常に勉強が必要ですね。

建設業法について

建設業法の目的とは?

第一条 この法律は、建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによつて、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進し、もつて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。

大きな目的は、「公共の福祉の増進に寄与」することですが、メインとなる目的は以下の3つです。

  1. 適正な施工の確保
  2. 発注者の保護
  3. 建設業の健全な発達の促進

この①~③の目的のために、以下の手段があります。
・建設業を営む者の資質の向上
・建設工事の請負契約の適正化

建設業法の”これから”

1949年に制定された建設業法ですが、何度も改正が行われてきました。労働力人口の減少やITによるイノベーションなど、劇的な変化が起きている昨今、法制度をはじめ建設業関連制度の基本的な枠組みについて有識者による検討が行われています。

国土交通省がまとめた「建設産業政策2017+10 ~若い人たちに明日の建設産業を語ろう~ PDF」では、今後の建設業界が目指すべき方向性が示されています。

そして、2019年4月からは、建設キャリアップシステムが稼働しています。これは、建設業の技能者を本人確認のうえでシステムに登録するもので、IDが付いたICカードが本人に交付されます。いつ、どの現場に、どの職種で、どの立場で働いていたのか、日々の就業実績として電子的に記録・蓄積するとともに、どのような資格を取得し、どのような技能があるのか記録を蓄積するものです。普及率は2024年時点で20%ほどですが、今後ますます広がっていくでしょう。

さらに、2023年1月からは、建設業許可・経営事項審査電子申請システム(JCIP)が始まりました。現在紙での申請が行われていますが、申請書面のデジタル化のほか、許可通知書、申請書類の閲覧、経営事項審査の結果通知書などがオンラインに移行しています。ちなみに、2024年9月現在、福岡県ではまだシステムの運用が開始されていません。

建設業法の構成

第1章 総則(第1条、第2条)
第2章 建設業の許可
 第1節 通則(第3条、第4条)
 第2節 一般建設業の許可(第5条~第14条)
 第3節 特定建設業の許可(第15条~第17条)
 第4節 承継(第17条の2、第17条の3)
第3章 建設工事の請負契約
 第1節 通則(第18条~第24条)
 第2節 元請負人の義務(第24条の2~第24条の8)
第3章の2 建設工事の請負契約に関する紛争の処理(第25条~第25条の26)
第4章 施工技術の確保(第25条の27~第27条の22)
第4章の2 建設業者の経営に関する事項の審査等(第27条の23~第27条の36)
第4章の3 建設業者団体(第27条の37~第27条の40)
第5章 監督(第28条~第32条)
第6章 中央建設業審議会等(第33条~第39条の3)
第7章 雑則(第39条の4~第44条の3)
第8章 罰則(第45条~第55条)

どんなとき、建設業の許可が必要?

建設業法によると・・・
(建設業の許可)
第三条 建設業を営もうとする者は、次に掲げる区分により、この章で定めるところにより、二以上の都道府県の区域内に営業所(本店又は支店若しくは政令で定めるこれに準ずるものをいう。以下同じ。)を設けて営業をしようとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあつては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない
一建設業を営もうとする者であつて、次号に掲げる者以外のもの
二建設業を営もうとする者であつて、その営業にあたつて、その者が発注者から直接請け負う一件の建設工事につき、その工事の全部又は一部を、下請代金の額(その工事に係る下請契約が二以上あるときは、下請代金の額の総額)が政令で定める金額以上となる下請契約を締結して施工しようとするもの

つまり、建設業を営もうとする場合、以下の場合以外は、建設業の許可を受けなければなりません。

【 許可が不要な軽微な建設工事とは? 】

  • 建築一式工事:
    1件の請負代金が1500万円(消費税込)未満の工事、または請負代金の額に関わらず、木造住宅で延べ面積が150㎡未満の工事
  • 建築一式工事以外の工事(専門工事):
    1件の請負代金が500万円(消費税込)未満の工事

【 許可が必要な工事とは? 】

以下のものは、個人や法人を問わず、国土交通大臣または都道府県知事の許可が必要となります。

  • 建設工事の発注者から、直接建設工事を請け負う元請人
  • 元請負人から建設工事の一部を請け負う下請負人

もし許可を受けずに工事をしたら?

許可を受けずに軽微な建設工事の限度を超える建設工事を請け負って営業をした場合、無許可営業として罰せられます。

建設業法によると・・・
第四十七条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
第三条第一項の規定に違反して許可を受けないで建設業を営んだ者

3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられることとなりますので、必ず許可を受けて工事をしましょう。

建設業の種類とは?

建設業の業種は、建設工事の種類ごとに区分されていて、2つの一式工事と27の専門工事に分けられています。

2つの一式工事とは?

土木一式工事建築一式工事は、他の27の専門工事とは異なっています。総合的な企画・指導・調整のもとに土木工作物または建築物を建設する工事で、専門工事を有機的に組み合わせて建設工事を行う場合の業種です。

この「一式工事」と「専門工事」は全く別の許可業種です。一式工事の許可を受けた建設業者でも、500万円以上の専門工事を請け負う場合には、その専門工事業の許可が必要になります。一式工事の許可があっても、包括的に他の専門工事を行えるわけではありませんので、注意が必要です。

まとめ:建築工事と建築業の種類・工事内容・工事の例

土木一式工事 1)土木一式工事:土木工事業
例:ダム、空港、トンネル、高速道路、公道下の下水道、区画整理など
元請業者の立場で総合的な企画・指導・調整のもとに土木工作物を建設する工事であり、複数の下請業者によって施工される大規模かつ複雑な工事。
建築一式工事 2)建築一式工事:建築工事業
例:建築確認を必要とする新築及び増改築
元請業者の立場で総合的な企画・指導・調整のもとに建築物を建設する工事であり、複数の下請業者によって施工される大規模かつ複雑な工事。
大工工事 3)大工工事:大工工事業
例:大工工事、型枠工事、造作工事
木材の加工もしくは取付けにより工作物を築造し、または工作物に木製設備を取り付ける工事。
左官工事 4)左官工事:左官工事業
例:左官工事、モルタル工事、吹付け工事等
工作物に壁土、モルタル、漆くい、プラスター、繊維等をこて塗り、吹き付け、または貼り付ける工事。
足場等仮設工事 5)とび・土工・コンクリート工事:とび・土工工事業
例:とび工事、足場等仮設工事、くい工事、コンクリート工事等
足場の組み立て、機械器具・建設資材等の重量物の運搬配置、鉄骨等の組立て等を行う工事、くい打ち工事、土砂等の掘削、コンクリートにより工作物を築造する工事、その他基礎的ないしは準備的な工事。
コンクリートブロック積み工事 6)石工事:石工事業
例:石積み工事、コンクリートブロック積み工事等
石材の加工または積方により工作物を築造し、または工作物に石材を取り付ける工事。
屋根工事 7)屋根工事:屋根工事業
例:屋根ふき工事、屋根一体型の太陽光パネル設置工事等
瓦、スレート、金属薄板等により屋根をふく工事。
電気工事 8)電気工事:電気工事業
例:発電設備工事、送配電線工事、照明設備工事等
発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備等を設置する工事。
管工事 9)管工事:管工事業
例:冷暖房設備工事、衛生設備工事、水洗便所設備工事等
冷暖房、冷凍冷蔵、空気調和、給排水、衛生等のための設備を設置し、または金属製等の管を使用して水、油、ガス、水蒸気等を送配するための設備を設置する工事。
タイル・れんが・ブロック工事 10)タイル・れんが・ブロック工事:タイル・れんが・ブロック工事業
例:コンクリートブロック積み工事、タイル張り工事等
れんが、コンクリートブロック等により工作物を築造し、または工作物にれんが、コンクリートブロック、タイル等を取り付け、または貼り付ける工事。
鋼構造物工事 11)鋼構造物工事:鋼構造物工事業
例:鉄骨工事、屋外広告工事、鉄塔工事等
形鋼、鋼板等の鋼材の加工または組立てにより工作物を築造する工事。
鉄筋工事 12)鉄筋工事:鉄筋工事業
例:鉄筋加工組立て工事、鉄筋継手工事等
棒鋼等の鋼材を加工し、接合し、または組み立てる工事。
アスファルト舗装工事 13)舗装工事:舗装工事業
例:アスファルト舗装工事、コンクリート舗装工事等
道路等の地盤面をアスファルト、コンクリート、砂、砂利等により舗装する工事。
しゅんせつ工事 14)しゅんせつ工事:しゅんせつ工事業
例:しゅんせつ工事
河川、港湾等の水底をしゅんせつする工事。
板金工事 15)板金工事:板金工事業
例:板金加工取付け工事、建築板金工事等
金属薄板等を加工して工作物に取付け、または工作物に金属製等の付属物を取り付ける工事。
ガラス工事 16)ガラス工事:ガラス工事業
例:ガラス加工取付け工事、ガラスフィルム工事等
工作物にガラスを加工して取り付ける工事。
塗装工事 17)塗装工事:塗装工事業
例:塗装工事、ライニング工事、布張り仕上工事等
塗料、塗材等を工作物に吹き付け、塗り付け、または貼り付ける工事。
防水工事 18)防水工事:防水工事業
例:アスファルト防水工事、シーリング工事等
アスファルト、モルタル、シーリング等によって防水を行う工事。
インテリア工事 19)内装仕上工事:内装仕上工事業
例:インテリア工事、壁張り工事、たたみ工事等
木材、石膏ボード、吸音板、壁紙、畳等を用いて建築物の内装仕上げを行う工事。
プラント設備工事 20)機械器具設備工事:機械器具設備工事業
例:プラント設備工事、ダム用仮設備工事、立体駐車設備工事等
機械器具の組立て等により工作物を建設し、または工作物に機械器具を取り付ける工事。
熱絶縁工事 21)熱絶縁工事:熱絶縁工事業
例:冷暖房設備、動力設備または燃料工業等の熱絶縁工事等
工作物または工作物の設備を熱絶縁する工事。
電気通信工事 22)電気通信工事:電気通信工事業
例:電気通信線路設備工事、放送機械設置工事等
有線電気通信設備、無線電気通信設備、放送機械設備、データ通信設備等の電気通信設備を設置する工事。
造園工事 23)造園工事:造園工事業
例:植栽工事、景石工事、公園設備工事等
整地、樹木の植栽、景石の据付け等により庭園、公園、緑地等の苑地を築造し、道路、建築物の屋上等を緑化し、または植生を復元する工事。
さく井工事 24)さく井工事:さく井工事業
例:さく井工事、還元井工事、温泉掘削工事等
さく井機械等を用いて、さく孔、さく井を行う工事またはこれらの工事に伴う揚水設備設置等を行う工事。
サッシ取付け工事 25)建具工事:建具工事業
例:金属製建具取付け工事、サッシ取付け工事、ふすま工事等
工作物に木製または金属製の建具等を取り付ける工事。
水道施設工事 26)水道施設工事:水道施設工事業
例:取水施設工事、下水処理設備工事等
上水道、工業用水道等のための取水、浄水、配水等の施設を築造する工事または公共下水道もしくは流域下水道の処理設備を設置する工事。
消防施設工事 27)消防施設工事:消防施設工事業
例:屋内消火栓設置工事、スプリンクラー設置工事等
火災警報設備、消火設備、避難設備もしくは消火活動に必要な設備を配置し、または工作物に取り付ける工事。
ごみ処理施設工事 28)清掃施設工事:清掃施設工事業
例:ごみ処理施設工事、し尿処理施設工事
し尿処理施設またはごみ処理施設を設置する工事。
解体工事 29)解体工事:解体工事業
例:工作物解体工事
工作物の解体を行う工事。

さいごに

建設業許可は、国民の安全や発注者の利益を守るために必要不可欠な制度です。許可を取得することで、事業者は信頼性を高め、法令を遵守しながら業務を進めることが求められます。行政書士として、建設業の許可申請に関する業務は、多くの事業者にとって非常に重要であり、法律に基づく手続きをスムーズに進めるためのサポートが必要です。常に最新の法改正や業界の動向を把握し、事業者に適切なアドバイスを提供することが、行政書士に求められる大きな責務です。これからも、学んだ知識を活かし、建設業許可申請に関するサポートをより一層充実させていきたいと思います。

次回以降も、具体的な建設業許可の申請手続きや必要書類について、お届けする予定ですので、ぜひご期待ください!

行政書士トラスト事務所では、新たに建設業許可申請のサポートを業務に加える予定です。建設業の事業者様が安心して事業を進められるよう、許可取得に必要な書類作成や手続きのサポートを行います。初めて建設業許可を申請される方も、更新や変更手続きをお考えの方も、ぜひご相談ください。「複雑な書類手続きが不安」という声をよく耳にしますが、私たちがしっかりとサポートいたしますので、安心してお任せください。


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