医療法人設立完全ガイド:福岡県

福岡県で医療法人を設立する場合、一般の会社の設立とは異なり、手続きに時間がかかり、慎重なスケジュール管理が求められます。設立認可までには通常3ヶ月から6ヶ月ほどの期間が必要であり、自治体による審査は年に数回しか行われません。そのため、タイミングを逃さないよう十分な準備が重要です。

うつのみや
この記事は、こんな方におすすめ!
・福岡県で医療法人を設立しようと思っている方
・医療法人の設立方法について知りたい方
 

医療法人制度とは?

医療を安定的に提供するため、国民の健康を守ることを目的としています。また、医療機関の運営を法人化することで、非営利のまま資金を集めやすくし、経営を長期的に安定させます。これにより、個人が運営する医療機関の負担を軽減し、地域医療の安定した供給を確保します

医療法40条の2には、医療法人の責務が明記されています。
医療法人は、自主的にその運営基盤の強化を図るとともに、その提供する医療の質の向上及びその運営の透明性の確保を図り、その地域における医療の重要な担い手としての役割を積極的に果たすよう努めなければならない。

医療法人の種類と形態

医療法人を設立するには、法人の形態を選択する必要があります。現在設立できる医療法人には、「医療法人社団」と「医療法人財団」の2つの形態があります。社団型は複数の人が資産を拠出して設立する法人で、財団型は寄附によって設立されます。現在では、医療法人社団の設立が主流となっています。

医療法人社団 医療法人財団
複数の人(自然人)が集まり、財産を拠出
・都道府県知事の認可を受け、登記定款ですべてを定める・現在の主流
・個人または法人が財産を無償で寄付

・都道府県知事の認可を受け、登記

寄付行為ですべてを定める

・新たに設立されることはほとんどない

また、特に小規模な診療所に適した「一人医師医療法人」も存在します。これは、常勤医師が1人や2人でも設立可能な医療法人で、法人化することで税制上のメリットが得られる形態です。設立手続きは他の医療法人とほぼ同じであり、法人化によって事業の安定性や継続性が向上します。

医療法人化によるメリット及び必要な手続きとは?

メリット

  • 経営の永続性
  • 家計と経営の分離
  • 新たな事業展開

必要な手続き

  • 管理運営業務等の増加:定款(寄付行為)変更認可申請、役員変更届、登記完了届、事業報告書等の作成
  • 医療法人化による病院・診療所に関する手続きの増加:開設許可、変更許可等
  • 行政の関与:業務会計状況の報告、立入検査権、措置命令、業務停止命令等

医療法人の設立申請ができる人とは?

以下の方が医療法人の設立申請ができます。

  • 医師または歯科医師
  • 以下の欠格条項に該当していないこと
    ・成年被後見人または被保佐人でない
    ・医療法、医師法、歯科医師法等に、現在および過去2年間違反していない
    ・禁固以上の刑に処せられ、刑を執行されているか執行猶予期間中でない

医療法人の組織について(医療法人社団の場合)

医療法人を設立する際には、特定の役員や社員の配置が求められます。それぞれの役割や人数の選定は、設立の申請プロセスをスムーズに進めるために重要なポイントです。

役員の人数と選定

医療法人の設立には、原則として理事3人以上、監事1人以上を配置しなければなりません。ただし、一人医師医療法人の場合、都道府県知事の認可を受けることで、理事を1~2人にすることができます。

最初の申請にあたっては、可能な限り最小限の人数で申請することが推奨されます。役員の人数が多いと、申請書類が増え、審査の対象が広がるため、手続きが複雑になります。設立後に役員を追加することは、比較的簡単な手続きで行えます。

役員とは?

役員に就任するためには、さきほど確認した欠格事由に該当しないことが求められます。また、法人ではなく、自然人に限られます。法人の取引先企業の役員が医療法人の役員に就任することは望ましくないとされています。

理事とは?

理事は法人の職務を執行し、常務を処理します。また、医療法人が開設する診療所等の管理者は理事に就任しなければなりません。理事には、通常、社員の全部または一部の方が就任しますが、社員以外の方が就任してもかまいません。

理事長とは?

理事長は理事の中から選出され、法人全体の業務を総括します。理事長は原則として医師または歯科医師であることが求められ、他の医療法人と理事長を兼務することは避けるべきとされています。

監事とは?

監事は法人の業務と財産の状況を監査し、毎会計年度に監査報告書を作成します。また、監事は理事や法人の従業員を兼ねることはできません。親族関係や取引関係のある個人や法人の役員も、監事に就任することはできません。

社員とは?

医療法人社団は、人々の集合体であり、その人々のことを社員といいます。社員は、原則として3人以上必要で、財産を拠出した方は、原則、社員になります。もちろん、拠出していない方も社員になることができます。ただし、医療法人や株式会社等は、社員になることはできません。

従業員とは?

医療法人の開設する病院等で働いている方を従業員といいます。理事長や常務理事であっても、医療法人が開設する病院等で働いていれば従業員となります。

説明会の重要性

福岡県では、春と秋に医療法人設立に関する説明会が福岡県と福岡県医師会の主催で開催されています。この説明会は設立認可申請において非常に重要なステップです。特に、一人医師医療法人を設立しようとする場合、福岡県医師会の説明会に参加することが強く推奨されます。

説明会に参加することで、申請に必要な書類やプロセスに関する詳細な情報を得ることができ、その後の手続きがスムーズに進められます。

認可から開業までのスケジュール

説明会への参加後、認可が下りるまでに約5ヶ月、その後診療所を開業するまでにさらに1〜2ヶ月の時間がかかります。全体のプロセスを見積もると、少なくとも6ヶ月以上を見込んでおく必要があります。時間がかかるため、早めに準備を始めることが成功の鍵です。

設立手順と必要な届出

説明会後は、所轄の官庁からの指導を受けながら、認可に向けた手続きを進めていきます。特に、一人医師医療法人を設立する場合でも、他の医療法人と大きく異なる点はなく、一般的な手順に沿って進行します。また、診療所開設時には、診療用エックス線装置の届出や麻薬管理者免許の申請など、保健所への各種届出が必要です。旧診療所の廃止届と新法人の開設届を同時に行い、生活保護指定医療機関の届出も自治体で手続きします。

病院開設の流れ

では、医療法人が病院を開設する場合の流れを細かく確認していきましょう。
①~⑥が設立認可の流れ、⑦~⑪が開設手続きの流れ、⑫は設立後の届について解説しています。

  1. 設立説明会及び個別相談:福岡県の医療指導課
  2. 設立認可の申請:保健所、医療指導課
  3. 医療審議会にて意見聴取→答申
  4. 法人設立手続き:認可書
  5. 法人登記:設立認可後、認可書が届いてから2週間以内に設立の登記をしなければならない。
  6. 登記完了届
  7. 開設許可申請:通常の新規開設と同じ手続きが必要。開設者が医師、歯科医師以外のものになるため、診療所は継続していても開設許可が必要となる。
  8. 病床設置許可申請:有床診療所のみ開設許可申請と同時に申請が必要となる。
  9. 使用許可申請:無床診療所は必要ありません。
  10. 開設後の届出等:医療法人としての開設後の届出が必要です。また、前日付けで個人開設の病院・診療所の廃止届を提出します。医療法人が開設する診療所が、その構造設備等を変更する場合は、変更許可が必要です。
  11. 保険診療関係の手続き:保険(診療報酬請求)については継続扱いとなり、開設した月の20日までに申請すれば、遡及されます。申請先は、九州厚生局指導監査課です。
  12. 設立後の届出等:以下の届出が必要となります。各種届出は1部(事業報告書等の届出は2部)、申請書は2部必要です。保健所等に提出します。
    ・事業報告書等の届出(決算届)
    ・役員変更届
    ・登記完了届
    ・定款(寄付行為)変更認可申請等

医療法人設立認可申請書類一覧(福岡県の場合)

医療法人化の最初の山場は、「医療法人設立認可申請書」の手続きです。申請から約6か月後に認可書が受け取れるということを考えると、この認可申請書のボリュームはなかなかのものとなります。以下、福岡県の場合の主な提出書類を一覧にまとめました。

  • 医療法人設立認可申請書
  • 定款または寄付行為
  • 財産目録:
    ・設立時の財産目録
    ・財産目録の明細書
    ・通常財産の内訳明細書
    ・設立時の負債内訳書
    ・負債の残高証明及び負債引継承認書
    ・リース引継承認書
    ・買掛金引継承認書
  • 設立決議録:一人医師医療法人は不要です。
  • 設立趣意書
  • 不動産その他の重要な財産の権利の所属についての登記所、銀行等の証明書類:
    ・不動産登記の登記事項証明書
    ・不動産の鑑定評価書
    ・銀行等の拠出金保管に関する証明書(残高証明書)
  • 医療法人が開設しようとする病院または診療所の診療科目、従業者の定員、敷地及び建物の構造設備の概要を記載した書類:
    ・施設の概要
    ・不動産賃貸借契約書の写し及び賃貸人の所有を証する登記事項証明
    ・賃貸借契約の引継ぎに関する覚書
    ・不動産登記の登記事項証明書
    ・周辺図、敷地図、建物平面図
  • 設立後2年間の事業計画及びこれに伴う予算書:一人医師医療法人は不要です。
  • 役員及び社員の名簿
  • 設立者の履歴書及び印鑑証明
  • 役員就任承諾書、履歴書及び印鑑証明
  • 設立代表者を定めたときは、適法に選任されたこと並びにその権限を証する書類:一人医師医療法人は不要です。
  • 開設しようとする病院または診療所の管理者となるべき者の氏名を記載した書面及び医師免許証の写し
  • 医療法人年間収支見込額
  • 基金に関する書類(基金制度を利用する場合):
    ・基金の募集事項等の通知について
    ・基金引受申込書
    ・基金の割当て決定について
    ・基金拠出契約書

行政書士トラスト事務所の業務案内

医療法人設立の代行サービスとその流れ

行政書士トラスト事務所では、北九州市内を拠点に、福岡県内の医療法人設立支援を行っております。特に、個人診療所を運営されているお忙しい医師や歯科医師の方々を対象に、書類作成や申請代行サービスを提供しています。

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    ウェブサイトのフォームやメールでお気軽にお問い合わせください。
  2. ご連絡
    お問い合わせ後、当事務所よりメールまたはお電話にてご連絡いたします。
  3. 事前打ち合わせ
    要件や費用、スケジュールの確認を行い、申請代行サービスをご希望の方には、担当者が訪問して詳細な説明を行います。
  4. 正式ご依頼
    打ち合わせ後、正式にご依頼いただきます。当事務所では原則として着手金をいただいております。金額等はお問合せください。

私たちは、司法書士や他の士業とも密に連携しながら、スムーズな手続きとスケジュール管理を徹底し、お客様の負担を最小限に抑えたサービスを提供しております。医療法人の設立や各種届出に関してご不明点やお悩みがございましたら、ぜひ当事務所までご相談ください。


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