先日、Netflixで話題のオリジナルドラマ「地面師」を観ました。このドラマは、認知症の高齢者を相手にした詐欺ではありませんが、大手の不動産会社を相手に詐欺を働く集団の物語です。実際に東京で起こった事件を元に作られたもので、全7話のドラマは一気に見てしまうほど引き込まれました。
監督・脚本は大根仁氏で、豊川悦司さん、綾野剛さん、北村一輝さん、ピエール瀧さん、小池栄子さんなど豪華キャストが出演しています。特に、綾野剛さんがホストに扮するシーンや、大手不動産会社をターゲットにした100億円詐欺の展開は見逃せません。
このドラマは、大手不動産会社を相手にした詐欺事件を題材にしており、土地の奪い合いを巡る激しい戦いが描かれています。不動産業界特有の緊張感や、土地の奪い合いが戦争そのものであるというメッセージが強く伝わってきます。
ドラマ「地面師」のような不動産詐欺は、現実の世界でも問題となっています。特に、日本では認知症の高齢者が詐欺のターゲットにされるケースが増加しています。今日は、認知症の高齢者を狙った不動産詐欺の実態について詳しく見ていきましょう。
・認知症対策について知りたい方
・認知症高齢者を狙った新しい不動産詐欺について知りたい方
・認知症対策を検討している方
昨今、認知症の高齢者を狙った不動産詐欺が多発しています。先日も、NHKニュースでこの問題が取り上げられていました。今回の記事では、認知症の高齢者を狙った不動産詐欺の実態と予防策について解説します。
知らないうちにアパートを購入!?
一人暮らしをしていた80代の女性は、6年前に認知症と診断されました。しかし、彼女は「一人で気楽に暮らしたい」との意向が強く、ヘルパーやケアマネージャーの支援を受けながら生活していました。そんな中、女性の銀行口座からどこかに突然300万円が振り込まれたことに、家族が気付きました。
女性の息子は不審に思い、口座の振込先を調査した結果、都内の不動産販売会社に300万円が振り込まれていることが判明しました。しかし、女性本人にはその覚えが全くなく、完全に忘れてしまっていました。これは、認知症の進行により記憶が曖昧になっていたためです。
不動産販売会社の主張
息子が不動産販売会社に電話で問い合わせると、担当者は「お母様はアパートの一室を購入された」と説明しました。さらに、本人も納得して契約したため、問題のない取引だと主張しました。しかし、実際に調べてみると、その物件は築30年以上の古いアパートの一部屋でした。
実際に購入したのは一部の権利
さらに詳しく調査を進めたところ、女性が購入したのはアパートの一部屋ではなく、55分の6(約11%)の持ち分だけでした。同じアパートの他の部屋は、一部屋約300万円で販売されているにもかかわらず、女性はその持ち分を相場の約10倍の価格で購入させられていました。
家族の怒りと驚き
その女性の息子はこの事実に驚き、憤りを感じたそうです。母親が不動産投資に失敗したと見なされることを懸念し、さらに、認知症を利用した詐欺行為であることに怒りを覚えたということです。
このような手口で、認知症高齢者を狙った詐欺が横行している状況では、被害者の家族が積極的に行動し、詐欺の実態を公表することで、他の被害を未然に防ぐ手助けになることが期待されます。また、詐欺に対する警戒心を高め、認知症の高齢者を守るための対策が重要となります。家族やコミュニティが連携して情報を共有し、詐欺に対する理解を深めることが、被害を減らす一つの方法です。
その後・・・購入したアパートの現状
80代の女性が購入したアパートは、最寄り駅からも遠く、投資対象とはとても思えない物件でした。不動産登記を調べると、その女性以外にも複数の所有者がいて、不動産販売会社も一部を所有していました。このように、共同所有の物件を販売することで、売却が困難な状況を作り出し、高齢者から利益を得ようとするのが最近の不動産詐欺の手口です。
高齢者を狙った巧妙な手口
警視庁は、この事件に関与した4人を逮捕しました。彼らは、別の80代の認知症の女性に対しても同様の手口で不動産を購入させ、総額5000万円をだまし取った疑いがあります。彼らは被害者とともに金融機関に同行し、振り込み手続きをさせたり、インターネットバンキングの口座を勝手に開設して、会社側の口座に現金を振り込ませたりしていたそうです。
大規模な詐欺組織
警視庁の捜査により、この不動産販売会社は、50件以上の契約を結び、1年間で7億円以上を売り上げていたことが明らかになりました。さらに、会社の関係先からは80歳以上の高齢者約9万人分の名簿や電話マニュアルが押収されました。電話マニュアルには、高齢者との会話の切り出し方や、認知機能の程度、生活状況、資産状況などを聞き出す方法が詳しく記載されていました。
認知症高齢者の資産管理が課題
厚生労働省の調査によると、2025年には認知症の高齢者が471万6000人に達し、2040年には584万2000人に増えると推計されています。また、民間のシンクタンクの試算によると、認知症高齢者が保有する金融資産は、2023年に118兆円、2040年には197兆円に達すると試算されています。このような状況下で、認知症高齢者の資産管理が重要な課題となっています。認知症高齢者の資産管理において、以下のような対策が重要です。
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家族と話し合うこと
- 概要: 認知症になる前に、家族と資産管理や今後の生活について話し合うことが重要です。家族と共有することで、将来的な資産の使い方や管理方法を明確にできます。
- 詳細:
- 目的: 資産の現状を家族と共有し、今後の管理方法や費用の使い方を合意する。
- 手順: 定期的な家族会議を開き、資産の状況や認知症の進行具合について話し合う。
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家族信託
- 概要: 家族信託は、資産の所有者が信頼できる家族に資産の管理を託す制度です。認知症になる前に信託契約を結ぶことで、資産の管理がスムーズに行えます。
- 詳細:
- 目的: 認知症などで本人が資産を管理できなくなった場合でも、信託された家族が資産を管理し、適切に運用する。
- 手順: 信託契約を締結し、信託財産の範囲や管理方法を明確にする。信託銀行や信託会社を利用する場合もある。
- 参考記事:「認知症対策④ 家族信託~認知症になる前の対策2~」
こちらの記事では、家族信託について詳しく解説しています。
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任意後見制度
- 概要: 任意後見制度は、本人が判断能力があるうちに、信頼できる人物(任意後見人)を選び、将来の後見契約を結ぶ制度です。任意後見契約により、認知症などで判断能力が低下した場合に備えることができます。
- 詳細:
- 目的: 将来的に本人の判断能力が低下した場合に、選任された任意後見人が本人の意思を尊重しながら資産管理を行う。
- 手順: 公正証書で任意後見契約を結び、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を依頼する。
- 参考記事:「認知症対策③ 任意後見制度~認知症になる前の対策1~」
こちらの記事では、家族信託について詳しく解説しています。
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成年後見制度
- 概要: 成年後見制度は、認知症などで判断能力が低下した後に家庭裁判所が後見人を選任し、資産管理や生活支援を行う制度です。
- 詳細:
- 目的: 判断能力が低下した本人の財産を保護し、生活を支援する。
- 手順: 家庭裁判所に後見開始の申し立てを行い、裁判所が後見人を選任する。後見人は本人の財産を管理し、必要な支援を行う。
- 参考記事:「認知症対策⑤ 成年後見~認知症になった後の対策~」
こちらの記事では、家族信託について詳しく解説しています。
認知症発症前であれば、次の対策を講じることで、認知症高齢者の資産を適切に管理し、詐欺や不正な利用から守ることができます。
また、認知症発症後には、④ 成年後見制度を早急に活用して資産を保護することが重要です。これらの対策を講じる際には、信頼できる専門家との協力が不可欠です。認知症になってからでは遅いため、「まだ早い」と感じるうちに、対策をしっかりと立てることが大切です。
当事務所の認知症対策サービス
私たち行政書士トラスト事務所では、「おひとりさま・おふたりさまの認知症対策」というサービスを提供しています。認知症になる前に、早めの対策を講じることが重要です。家族信託や任意後見制度の活用など、専門的なアドバイスを提供し、大切な資産を守るお手伝いをしています。詳しくは下記のContactから、お気軽にご相談ください。