近年、日本を訪れる外国人旅行者の数が増加しており、観光業界の活性化が期待されています。この流れをさらに加速させるために、日本政府は外国人旅行者の入国手続きをスムーズにする新しい制度を導入する計画です。この記事では、この新制度の詳細とその影響についてまとめています。
外国人旅行者数の増加
日本政府観光局のデータによると、今年5月に日本を訪れた外国人旅行者は304万人に達したそうです。この数は、3月から3か月連続で300万人を超えており、過去最多となっています。日本の観光地は、多くの外国人旅行者で賑わっており、観光業界に大きな利益をもたらしています。
新制度「プレクリアランス」の導入
このような背景の中、日本政府は外国人旅行者の入国手続きを効率化するための新しい制度「プレクリアランス」を導入することを決定しました。この制度は、外国人旅行者が出発する空港で搭乗前の待ち時間を利用して日本への入国審査の大部分を事前に受けることを可能にします。これにより、日本到着時には簡単な確認だけで入国できるようになります。
▽ 現在の流れ
▷出入国在留管理庁 資料「プレクリアランス概要」より
▽「プレクリアランス」導入後の流れ
▷出入国在留管理庁 資料「プレクリアランス概要」より
このように、これまで到着後に行っていた書類の確認や指紋及び顔写真の取得・照合などを出発する空港で行うことで、到着後の確認の時間が短くなり、今よりもスムーズに入国できるようになります。
台湾からの旅行者を対象に試行
2024年2月から台湾からの旅行者を対象に「プレクリアランス」の運用が試験的に開始されました。政府は、この試行運用の結果を見ながら、対象国や地域を順次拡大していく計画です。
オーバーツーリズムへの対応
一方で、日本の観光地では「オーバーツーリズム」が問題となっています。観光スポットが過剰に混雑することによる地域社会や環境への負担が懸念されています。政府は、この問題に対処するために、観光地の通行料や外国人旅行者に特別な料金を課す「二重価格」などの施策を検討しています。
新制度「プレクリアランス」の期待される効果
「プレクリアランス」制度の導入により、以下のような効果が期待されています。
- 入国手続きの効率化: 出発地で事前に手続きを行うことで、到着後の入国手続きが簡略化され、旅行者のストレスが軽減されます。
- 観光地の混雑緩和: 効率的な入国手続きにより、観光地へのアクセスがスムーズになり、混雑が緩和される可能性があります。
- 観光業の活性化: より多くの外国人旅行者が日本を訪れるようになり、観光業界全体の活性化が期待されます。
プレクリアランスの問題点と課題
「プレクリアランス」制度は多くの利点がある一方で、いくつかの問題点や課題も考えられます。
- 技術的な課題: 出発地での事前審査システムの導入には、高度な技術とインフラが必要です。これに伴うコストや導入にかかる時間が問題となる可能性があります。
- セキュリティの確保: 出発地での審査が正確かつ厳格に行われなければ、日本到着時の安全保障に影響を及ぼす恐れがあります。適切なセキュリティ対策が求められます。
- 旅行者の理解と協力: 新しい制度に対する旅行者の理解と協力が不可欠です。制度の導入初期には混乱が生じる可能性があり、適切な情報提供とサポートが重要です。
- 制度の柔軟性: 各国・地域ごとの入国条件や手続きが異なるため、制度の柔軟性が求められます。地域ごとに異なる対応が必要となる場合があります。
さいごに
日本政府の「プレクリアランス」制度は、外国人旅行者の入国手続きを効率化し、観光業界のさらなる発展を促進するための重要なステップです。しかし、技術的な課題やセキュリティの確保、旅行者の理解と協力など、解決すべき課題も多く存在します。今後、この制度がどのように展開され、どのような効果をもたらすかに注目が集まります。また、オーバーツーリズムの問題にも対応し、持続可能な観光地の運営を目指す取り組みが進められていることから、観光業界全体のさらなる発展が期待されます。
▷参考:NHK News Web「外国人旅行者の入国手続き 時間短縮の新制度を導入へ」