認知症対策⑦ LGBTQの認知症対策・相続対策とは?

LGBTQの認知症対策

今や、日本は超高齢社会となり、認知症の高齢者も増加しています。そのため、最近問題になっているのが「認知症による財産凍結」です。

財産凍結とは?
認知症になると、預貯金が引き出せなくなったり、不動産などの財産が使えなくなったりすることを指します。財産が凍結されると、認知症の高齢者本人だけでなく、介護をする家族の生活にも大きな影響が出ます。

最近は「終活」ブームで、自分が亡くなった後の「相続」について考える人が増えていますが、認知症対策についてはあまり考えられていないのが現状です。私も認知症の母を数年間介護していました。そのため、「自分が認知症になったらどうしよう・・・。」という漠然とした不安を常に抱えていました。今後は「おひとりさま」の高齢者が増えることが予想されるため、相続対策だけでなく、認知症対策も多くの方々が検討しておく必要があります。

そこで、数回にわたって「認知症対策」についての記事をまとめていくことにしました。多くの方々に読んでいただければ幸いです。

 

認知症対策記事一覧

今回の記事では、LGBTQの方々の認知症対策・相続対策についてまとめました。

LGBTQの方々にとって、パートナーシップ証明書の交付が進む一方で、法律上の婚姻関係にあるカップルとは異なり、認知症や相続に関するリスクが多く存在します。特に、遺言書を作成しないままパートナーが亡くなった場合、残されたパートナーは多くの問題に直面することになります。この記事では、LGBTQのパートナーが安心して生活を続けられるよう、認知症対策や遺言書の重要性とその作成方法などについて詳しく解説します。

LGBTQとは?

LGBTQとは、セクシュアルマイノリティ(性的少数者)の総称のひとつです。セクシュアルマイノリティ(性的少数者)を代表するレズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシュアル(Bisexual)、トランスジェンダー(Transgender)、そして、クエスチョニング(Questioning)あるいはクィア(Queer)の5つの頭文字を取った言葉です。最近では、これに+(プラスアルファ)を付けて、「LGBTQ+」と呼ばれることもあります。

 LGBTQパートナー向け遺言書の必要性

遺言書を作成しないリスク

遺言書を作成しないと、法律上の配偶者や血縁関係にある親族が相続人となります。これはLGBTQのパートナーにとっては大きなリスクです。以下に具体的なリスクを挙げます。

  1. 自宅を失うリスク: パートナーと共有していた自宅が相続人の手に渡り、退去を求められる可能性があります。
  2. 預貯金が引き出せなくなるリスク: パートナーの名義の預貯金口座が凍結され、引き出せなくなります。
  3. 財産が親族に渡るリスク: パートナーの遺産が全て親族に渡り、同性パートナーが何も受け取れない可能性があります。

LGBTQパートナー向け遺言書の作成ポイント

LGBTQのパートナーが遺言書を作成する際に押さえておくべきポイントを紹介します。

公正証書遺言を使う

遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類がありますが、特に公正証書遺をおすすめします。公正証書遺言は公証人が作成するため、形式上のミスがなく、法的に有効です。また、遺言書の紛失や改ざんのリスクも低くなります。

遺留分侵害に備える

遺留分とは、法律で相続人に保障されている最低限の相続分を指します。この制度は、特定の相続人が完全に遺産を受け取れなくなることを防ぐために設けられています。そのため、LGBTQのパートナーに全財産を遺贈したい場合でも、法定相続人である親や子供が遺留分を主張する可能性があります。

たとえば、遺言書でパートナーに全財産を遺贈すると記載した場合、法定相続人が遺留分侵害額請求を行うことで、パートナーが思うように財産を受け取れない状況が生じることがあります。このような事態を避けるためには、遺留分を考慮して遺産の配分を決定し、遺言書に明確に記載することが重要です。

具体的には、親や子供といった法定相続人が遺留分を請求する可能性がある場合、その分を考慮して遺産の一部を確保しておく必要があります。これにより、遺留分を巡る法的な争いを未然に防ぎ、パートナーがスムーズに遺産を受け取ることができるようにします。

また、遺言書を作成する際には、遺留分を適切に考慮した上で、専門家の意見を取り入れることが重要です。法律の専門家と相談しながら、個別の状況に応じた遺言書を作成することで、パートナーの権利を最大限に守ることができます。

遺言執行者を指名する

遺言内容を確実に実行するために、信頼できる遺言執行者を指名しましょう。遺言執行者には相続財産の管理や名義変更などの手続き権限が与えられます。パートナーを遺言執行者に指名することで、相続手続きがスムーズに進むメリットがあります。

遺贈の方法に気を付ける

遺贈には、特定遺贈と包括遺贈の2種類があります。

特定遺贈とは?

特定遺贈は、具体的な財産を指定して遺贈する方法です。例えば、「〇〇銀行の預金口座の残高すべてをパートナーに遺贈する」や「所有する不動産をパートナーに遺贈する」といった具体的な項目を遺贈します。これにより、遺贈される財産が明確になり、相続時に混乱が生じにくくなります。

包括遺贈とは?

包括遺贈は、財産全体の一部や全部を遺贈する方法です。例えば、「全財産の50%をパートナーに遺贈する」や「全財産をパートナーに遺贈する」といった形で遺言書に記載します。この場合、具体的な財産を指定しないため、包括遺贈は遺産全体の中での配分が重要になります。

LGBTQのパートナーに対して遺贈を行う際には、特定遺贈か包括遺贈の方法を選ぶことが推奨されます。具体的な財産を指定する特定遺贈は、後々のトラブルを避けるために有効です。特に、家や車、特定の銀行口座などの明確な資産を遺贈したい場合には、この方法が適しています。

また、包括遺贈も有効な方法ですが、遺留分を巡る争いが発生する可能性があります。そのため、包括遺贈を選ぶ場合でも、法定相続人が遺留分を主張できることを考慮し、その分を別途確保するなどの対策を講じる必要があります。

具体的な財産を指定せず、包括遺贈にする場合は、遺産分割協議において適切に配分が行われるよう、遺言執行者を指定しておくことも重要です。遺言執行者は、遺言の内容を実行する責任を負う人物であり、遺産が円滑に分配されるように調整します。

このように、遺贈の方法を慎重に選ぶことで、パートナーとのトラブルを避け、円満な相続を実現することができます。行政書士などの専門家からの法的なアドバイスを受けながら、最適な遺贈方法を選び、自分の意思を確実に実現するための遺言書を作成することが大切です。

祭祀主催者を指定する

祭祀財産(位牌、仏壇、墓石など)を受け継ぐ人を祭祀主宰者として指定しましょう。祭祀財産は相続財産とは区別されるため、遺言書でパートナーを祭祀主宰者に指定することで、遺骨なども安心して引き継ぐことができます。

付言事項を記載する

遺言書には法的拘束力のない付言事項を記載することができます。付言事項には、自分の気持ちや感謝の気持ちを伝えることができ、相続人が遺言内容に納得しやすくなります。特に家族に同性パートナーの存在を話していない場合、付言事項でパートナーへの思いを伝えることができます。

▷遺言書作成については、こちらの記事にまとめています。

LGBTQパートナーの相続対策の重要性

法定相続を避けるための対策

法定相続を避けるために、遺言書を作成することが最善の方法です。遺言書を作成することで、自分の遺志を確実に反映させることができ、残されたパートナーが安心して生活を続けることができます。

養子縁組も一つの方法

パートナーと養子縁組をすることで、法的な相続権を確保することができます。しかし、姓が変わることや年長者が養子になれないことなど、不便な点もあります。遺言書を作成することが最も効果的な相続対策です。

LGBTQパートナーへの遺言書作成の流れ

① 遺言書の作成準備

遺言書を作成する前に、財産の整理や相続人の確認を行いましょう。財産リストを作成し、遺言書に記載する内容を明確にします。

② 公証人との相談

公証役場に行き、公証人と遺言書の内容について相談します。公証人は法律の専門家であり、適切なアドバイスを受けることができます。

③ 遺言書の作成と署名

公証人が作成した遺言書を確認し、署名を行います。公証人が証人となり、遺言書が法的に有効であることを保証します。

④ 遺言書の保管

公正証書遺言は公証役場で保管されますが、自筆証書遺言の場合は信頼できる場所に保管しましょう。また、遺言執行者やパートナーにも遺言書の存在を伝えておくことが重要です。

LGBTQのパートナーにとって、遺言書を作成することは非常に重要です。遺言書を作成することで、法定相続を避け、自分の遺志を確実に反映させることができます。遺言書作成のポイントを押さえ、行政書士などの専門家のアドバイスを受けながら、安心して未来を築いていきましょう。

LGBTQの方々の相続対策は、まだまだ社会全体での理解が必要です。しかし、個々の対策を行うことで、自分たちの未来を守ることができます。遺言書を活用し、大切なパートナーとの関係を法的に確立し、安心して生活を続けていくための一歩を踏み出しましょう。

LGBTQの認知症対策とは?

次に、LGBTQの方々の認知症対策について考えて行きましょう。LGBTQの方々が認知症に備えるためには、早めの対策が必要です。認知症は誰にでも起こりうる問題であり、進行する前に適切な準備をしておくことが重要です。以下に、LGBTQの方々が行うべき認知症対策を紹介します。

任意後見契約を結ぶ

任意後見契約は、将来判断能力が低下した場合に備えて、自分の信頼できる人(後見人)に財産管理や生活支援をお願いする契約です。後見人にはパートナーを指名することができます。これにより、パートナーが適切な支援を受けることができます。

財産管理契約を結ぶ

財産管理契約は、認知症になる前に自分の財産を信頼できる人に管理してもらう契約です。パートナーや信頼できる第三者に財産管理を任せることで、認知症になった際にも安心して生活を続けることができます。

医療・介護の意思を伝える

認知症になった際の医療や介護に関する意思を事前に伝えておくことが重要です。これには、リビングウィルや事前指示書を作成することが含まれます。パートナーに自分の意思を伝えておくことで、適切な医療・介護が受けられるようになります。

生活環境の整備

認知症になっても安心して暮らせる生活環境を整えることが大切です。バリアフリーの住まいや介護サービスを利用できる環境を整備しておくことで、認知症になっても自立した生活を続けることができます。

法律の専門家に相談する

認知症対策を進めるにあたって、行政書士などの法律の専門家に相談することが重要です。専門家のアドバイスを受けることで、適切な契約や手続きを行うことができます。また、パートナーとの関係を法律上で守るための対策も講じることができます。

さいごに

LGBTQの方々にとって、相続対策や認知症対策は非常に重要です。LGBTQカップルに法的な婚姻関係が認められていない現状では、遺言書の作成や任意後見契約などを活用して、自分やパートナーの権利を守ることが必要です。特に、遺言書を作成することで、法定相続では対応できない問題を事前に解決し、パートナーに財産を確実に遺すことができます。

さらに、任意後見契約を結ぶことで、将来判断能力が低下した際にも信頼できるパートナーや第三者に自分の意思を託すことができます。これにより、認知症などのリスクが発生した場合にも、生活の質を保ちながら安心して過ごすことが可能となります。

これらの対策を講じる際には、法律の専門家に相談することが非常に重要です。専門家のアドバイスを受けることで、最適な方法で権利を保護し、必要な手続きを確実に行うことができます。また、法的な観点からのアドバイスを受けることで、見落としがちなポイントや新たなリスクにも対応することができます。

さらに、LGBTQの方々が直面する特有の問題にも対応するためには、広範な視点で対策を考えることが必要です。例えば、遺言書や任意後見契約以外にも、生活環境の整備や医療・介護に関する事前指示書の作成、信頼できる支援者とのコミュニケーションなど、多角的な対策が求められます。

LGBTQの方々にとっては、法的なサポートが不足している現状がありますが、その中でも自分たちの権利を守り、安心して暮らすための手段は存在します。自身の将来に向けて早めに対策を講じることで、予期せぬトラブルを避け、より安心して生活を続けることができます。

社会が多様性を尊重し、LGBTQの方々の権利がより一層認められる未来を目指しつつ、現在の法律の枠組みの中で最大限の対策を講じていくことが重要です。法律の専門家との連携を深め、常に最新の情報を収集しながら、適切な対応を行っていくことで、安心して未来を迎えることができるでしょう。

LGBTQの方々が抱える問題は個々の状況によって異なるため、一人ひとりに適した対策を講じることが求められます。自分やパートナーの将来を守るために、今できることから始めていきましょう。


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