日本の深刻化する人手不足への対応のため、2019年に創設されたのが在留資格「特定技能」です。
(詳しくはこちらの記事をご覧ください。▷在留資格「特定技能」とは?)
特定技能とは・・・
中小・小規模事業者をはじめとした人手不足は深刻化しており、我が国の経済・社会基
盤の持続可能性を阻害する可能性が出てきているため、生産性向上や国内人材確保のため
の取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において、一
定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていく仕組みを構築するために特
定技能制度が創設されました。
(引用:特定技能ガイドブック|出入国在留管理庁)
今回は、特定技能の「ビルクリーニング」についてまとめました。
日本は少子高齢化が進み、多くの産業で人手不足が深刻化しています。特にビルクリーニング業界では、高齢化が進み、若年層の労働者が減少しているため、労働力の確保が大きな課題となっています。2019年4月、政府はこの問題に対処するために、外国人労働者を受け入れるための新しい在留資格「特定技能」を設けました。この制度は、特定の技能を持つ外国人が日本で働くことを可能にし、様々な産業で人手不足を解消することを目的としています。この記事では、特定技能「ビルクリーニング」について詳しく紹介します。
ビルクリーニング業界の現状
ビルクリーニング業界は深刻な人手不足に直面しています。厚生労働省の資料(※1)によると、ビル・建物清掃員の令和4年度の地域ブロック単位の有効求人倍率は、最も高い北陸地方が 3.76 倍、最も低い南関東地方が 2.04 倍であり、この高い求人倍率は、業界が新しい労働力を必要としていることを示しています。
また、ビルクリーニングが法律によって定められている特定建築物(※2)の数は年々増加しており、令和4年度で47,910件に達しています。(▷参考:歴年の建築物衛生法特定建築物数 ビルメンWEBより)
これに加えて、65歳以上の清掃従事者が多く、今後さらに人手不足が進むことが予想されます。
※1 厚生労働省の資料:ビルクリーニング分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針
※2 特定建築物とは・・・
「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」に基づき、特定用途に利用される部分の面積が、3000m2以上(学校教育法第1条に規定する学校の場合は8000m2以上)の建築物のこと。
特定技能「ビルクリーニング」とは?
特定技能「ビルクリーニング」は、一定の専門性と技能を有し、即戦力となる外国人を受け入れるための在留資格です。この資格を取得した外国人は、最長5年間、日本のビルメンテナンス会社で働くことができます。ビルクリーニングの仕事には、日常清掃や定期清掃などが含まれます。特定技能「ビルクリーニング」には、1号と2号の2種類があり、1号はビルクリーニングの基本的な業務を行うための資格で、2号はさらに高度な技能を必要とする業務に従事するための資格です。
特定技能1号の取得方法
特定技能1号「ビルクリーニング」を取得するためには、次のいずれかの方法を選ぶことができます。
- ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験に合格する
- 技能試験: 公益社団法人全国ビルメンテナンス協会が実施する試験で、技能水準を評価します。試験は、日本国内や海外の指定された場所で受験できます。
- 日本語能力試験: 日本語能力試験(JLPT)のN4以上、または国際交流基金日本語基礎テストに合格する必要があります。
- 技能実習2号からの移行
- ビルクリーニング分野の技能実習2号を修了した外国人は、特定技能1号に移行することができます。この場合、特定技能1号評価試験は免除されます。
ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験
特定技能1号を取得するための技能試験は、受験者がビルクリーニングの作業手順を理解し、適切な方法、洗剤、用具を選んで清掃作業を遂行できるかどうかを評価します。試験は、判断試験と作業試験の2つに分かれいます。
特定技能2号の取得方法
特定技能2号を取得するためには、次のいずれかの試験に合格する必要があります。
- ビルクリーニング分野特定技能2号評価試験
- 現場管理の実務経験(2年以上)が必要です。受験者は所属する受入機関と協力して申し込む必要があります。
- ビルクリーニング技能検定1級試験
- こちらも実務経験が必要で、所属する受入機関と協力して申し込む必要があります。
特定技能「ビルクリーニング」の業務内容
「ビルクリーニング分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」に係る運用要領によると
特定技能外国人が従事する業務
ビルクリーニング分野において受け入れる特定技能外国人が従事する業務は、以下のとおりとする。なお、いずれの場合も、これらの業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務(※3)に付随的に従事することは差し支えない。
(1)1号特定技能外国人
運用方針3(1)アに定める試験及び運用方針5(1)アに定める業務に従い、上記第1の1(1)の試験合格により確認された技能を要するものであって、多数の利用者が利用する建築物(住宅を除く。)の内部を対象に、衛生的環境の保護、美観の維持、安全の確保及び保全の向上を目的として、場所、部位、建材、汚れ等の違いに対し、方法、洗剤及び用具を適切に選択して清掃作業を行い、建築物に存在する環境上の汚染物質を排除し、清潔さを維持する業務をいう。
(2)2号特定技能外国人
運用方針3(2)アに定める試験及び運用方針5(1)イに定める業務に従い、上記第1の1(2)のいずれかの試験合格及び実務経験により確認された技能を要するものであって、多数の利用者が利用する建築物(住宅を除く。)の内部を対象に、衛生的環境の保護、美観の維持、安全の確保及び保全の向上を目的として、場所、部位、建材、汚れ等の違いに対し、方法、洗剤及び用具を適切に選択して清掃作業を行い、建築物に存在する環境上の汚染物質を排除し、清潔さを維持する業務に、複数の作業員を指導しながら従事し、現場を管理する業務のほか、同業務の計画作成、進行管理その他のマネジメント業務をいう。
つまり、「多数の利用者が出入りする住宅ではない建物の中での清掃業務」が業務内容です。たとえば、オフィスビルやホテル等の建物の廊下、階段、トイレ、エレベーターやエスカレーターの清掃や、駐車場等の清掃のことです。
たとえば、ホテル等宿泊施設でのベッドメイクや客室整備、資機材等の倉庫の整備、建物の外壁や屋上等の洗浄作業などの業務のことです。日本人の従業員が担当している関連業務について、特定技能外国人が清掃作業(主たる業務)をおこないつつ、付随的にその関連業務に従事することは可能です。
ベッドメイキングは、清掃業務?
「主たる業務」としてホテル等の宿泊施設の客室のベッドメイク作業のみに従事することはできません。あくまでも、ベッドメイク作業は、「関連業務」として付随的に従事することのみ認められています。ビルクリーニング分野の「主たる業務」は、「清掃」です。ベッドメイクは清掃ではなく「整備」に該当するため、他の整備作業と同様に「関連業務」となりますので、注意が必要です。
特定技能外国人の採用方法
ビルクリーニング分野で、特定技能の外国人を採用するためには、企業が「特定技能所属機関」として以下の条件を満たす必要があります。
- 建築物清掃業または建築物環境衛生総合管理業の登録
- 支援体制の整備
- 特定技能外国人の住居契約の際の連帯保証人など、生活面での支援を行うことが義務付けられています。この支援業務は「登録支援機関」に委託することも可能です。
- ビルクリーニング分野特定技能協議会への加入
- 厚生労働省が設置する協議会への加入が義務付けられており、在留資格の申請前に加入する必要があります。
さいごに
ビルクリーニング業界は、人材不足と高齢化という課題に直面しています。建築物の衛生管理は利用者の健康に直結する重要な業務です。このため、外国人労働者を受け入れる特定技能制度の活用がますます重要となります。特定技能「ビルクリーニング」を取得した外国人材を積極的に採用することで、業界全体の人手不足を解消し、ビルの衛生管理を適切に行うことが期待されます。今後も建設ラッシュが続く日本において、特定技能ビルクリーニング分野の役割は一層重要となるでしょう。
※2024年3月の閣議決定にて、特定技能制度の大幅な変更がありました。下記の記事にまとめていますので、ご覧ください。
なお、当事務所の代表は日本語教師歴10年以上の経験を持ち、日本語研修やマナー研修を行うことが可能です。外国人労働者の方々が円滑に業務に取り組めるよう、お手伝いできればと考えております。ご依頼やご相談は、下記のコンタクトフォームからお気軽にお問い合わせください。