特定技能「飲食料品製造業」とは？

日本の深刻化する人手不足への対応のため、2019年に創設されたのが在留資格「特定技能」です。
（詳しくはこちらの記事をご覧ください。▷在留資格「特定技能」とは？）

特定技能とは・・・
中小・小規模事業者をはじめとした人手不足は深刻化しており、我が国の経済・社会基
盤の持続可能性を阻害する可能性が出てきているため、生産性向上や国内人材確保のため
の取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において、一
定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていく仕組みを構築するために特
定技能制度が創設されました。
（引用：特定技能ガイドブック｜出入国在留管理庁）

今回は、特定技能の「飲食料品製造業」についてまとめました。

日本政府は2019年4月、人手不足が深刻化している14の業種に対し、特定技能という新しい在留資格を導入しました。これにより、一定の技能と専門性を持つ外国人材が即戦力として働くことが可能になりました。日本の飲食料品製造業分野における人手不足は深刻化しており、特定技能制度はその解決策の一つです。今回は、「飲食料品製造業」分野について、外国人材の採用方法や要件、試験情報などを詳しくまとめています。

特定技能「飲食料品製造業」とは？

1. 制度の概要

特定技能「飲食料品製造業」は、外国人材が飲食料品製造業分野で働くための在留資格です。この資格は、一定の専門知識と技術を持つ人材が対象となります。「特定技能1号」の在留期間は最長5年です。特定技能制度における飲食料品製造業は、外国人も日本人と同様に飲料品などの製造に特化して働くことができる在留資格です。特定技能は技能実習よりも幅広い業務を行うことが可能であり、そのため多くの企業から注目されています。
▷参考：「特定技能」についてはこちらの記事をご覧ください。

2. 現状と見通し

2023年12月末時点で、飲食料品製造業分野で働く特定技能外国人は61,095人に達しています。政府は、2026年度から2030年度末までの5年間で139,000人の受け入れを見込んでおり、今後の増加が期待されます。
▷参考：出入国在留管理庁 特定技能在留外国人数 資料pdf
▷参考：特定技能の変更点についてはこちらの記事をご覧ください。

特定技能1号と2号の違い

特定技能1号は、最初に取得する在留資格で、最大5年間の就労が可能です。一方、特定技能2号は1号の後に取得でき、在留期限がなくなり長期的な就労が可能になります。

▷参考：食品産業特定技能協議会については、こちらの農林水産省のウェブサイトをご覧ください。

支援体制の整備

特定技能外国人を受け入れる企業や団体には、事前ガイダンス、出入国送迎、日本語学習、相談苦情対応などの支援が求められます。支援は自ら行うか、外部に委託することができます。過去2年間において外国人材の受け入れ実績がない場合や、支援体制を構築するのが難しい場合は、登録支援機関に委託する必要があります。

▷引用：出入国在留管理庁 資料「外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」pdf

採用競争力を高めるポイント

飲食料品製造業は外国人求職者に人気の業種です。しかし、多くの企業が採用を希望しているため、競争力がなければ求職者が集まりにくいです。給与設定や住居の提供など、競争力を高めるための対策が重要です。

外国人労働者の要件（1号の場合）

特定技能で働く外国人は、以下の１と２．あるいは  3．の要件を満たす必要があります。

1. 技能系の試験に合格する

特定技能で働くためには、以下の試験に合格する必要があります。

• 飲食料品製造業特定技能１号技能測定試験 

「飲食料品製造業特定技能１号技能測定試験とは?

特定技能1号「飲食料品製造業」を取得するための主要な方法は、「飲食料品製造業特定技能１号技能測定試験」に合格することです。試験内容は以下の通りです：

・試験言語：日本語
・学科試験：CBT方式 or ペーパーテスト形式（三者択一方式）
○試験内容：：ＨＡＣＣＰ（※1）等による一般的な衛生管理、労働安全衛生に係る知識を測定する。
・実技試験：CBT方式 or ペーパーテスト形式（判断・計画立案試験等）
○試験内容：図やイラスト等を用いた状況設定において正しい行動等を判断する判断試験及び所
定の計算式を用いて必要となる作業の計画を立案する計画立案試験等により業務上必要となる技能水準を測定する。
・合格基準：学科試験及び実技試験の合計得点の 65％以上を合格とする。

▷参考：試験について詳しく知りたい方は、外国人食品産業技能評価機構（略称：OTAFF）のウェブサイトをご覧ください。

※1 HACCPとは？
特定技能「飲食料品製造業」を取得するためには、HACCPに沿った衛生管理の知識が必要です。具体的には、食中毒菌や異物混入に関する知識、食品等を衛生的に取り扱う知識、施設設備の整備と衛生管理に関する知識が求められます。このHACCPとは、「Hazard（危害）」「Analysis（分析）」「Critical（重要）」「Control（管理）」「Point（点）」の5つからなる衛生管理の手法のことで、令和3年6月1日から、原則として、すべての食品等事業者がこのHACCPに沿った衛生管理に取り組む必要があります。
HACCPについては、こちらの厚生労働書の資料をご覧ください。

2. 日本語試験に合格する

特定技能「飲食料品製造業」を取得するためには、日本語能力も求められます。以下のいずれかの日本語試験に合格する必要があります：

• 日本語能力試験（JLPT）N4以上
• JFT-Basic（国際交流基金日本語基礎テスト）A2以上
  

日本語能力試験（JLPT）

JLPTは日本語能力を測定する試験で、N5からN1までの5段階があります。特定技能ではN4以上が求められ、日常的な日本語会話ができることが必要です。試験は年2回行われます。

▷参考：「日本語能力試験」については、こちらの記事をご覧ください。

国際交流基金日本語基礎テスト

このテストは、日常生活での日本語能力を測定するもので、年5回開催されます。

3. 技能実習2号を修了する

技能実習2号を修了した外国人労働者は、試験を免除され、特定技能への移行が可能です。ただし、技能実習2号の修了は飲食料品製造業分野で行われたものに限られます。

▷引用：農林水産省 資料「飲食料品製造業分野特定技能1号技能測定試験について」pdf

外国人労働者の要件（2号の場合）

下記の試験に合格し、さらに実務経験の要件（日本国内での管理者等としての飲食料品製造業実務経験を２年以上）を満たす必要があります。

 技能系の試験に合格する

特定技能で働くためには、以下の試験に合格する必要があります。

• 飲食料品製造業特定技能２号技能測定試験 

「飲食料品製造業特定技能２号技能測定試験とは?

特定技能2号「飲食料品製造業」を取得するための主要な方法は、「飲食料品製造業特定技能２号技能測定試験」に合格することです。試験内容は以下の通りです：

・試験言語：日本語
・学科試験：CBT方式 or ペーパーテスト形式（三者択一方式）
○試験内容：：ＨＡＣＣＰ等による一般的な衛生管理、労働安全衛生に係る知識に加え、衛生管理、品質管理、納期管理、コスト管理、従業員管理、原材料管理等管理職に必要な知識を測定する。
・実技試験：CBT方式 or ペーパーテスト形式（判断・計画立案試験等）
○試験内容：図やイラスト等を用いた状況設定において正しい行動等を判断する判断試験及び所
定の計算式を用いて必要となる作業の計画を立案する計画立案試験等により業務上必要となる技能水準を測定する。
・合格基準：学科試験及び実技試験の合計得点の 65％以上を合格とする。

▷参考：試験について詳しく知りたい方は、外国人食品産業技能評価機構（略称：OTAFF）のウェブサイトをご覧ください。

特定技能「飲食料品製造業」外国人の採用手順

採用する手順は以下の通りです。

① 支援体制の選択

特定技能1号外国人を雇用する企業は、支援業務を自社で行うか、登録支援機関に委託するかを選択する必要があります。現状としては、特定技能で外国人を採用している多くの企業が、支援業務を「登録支援機関」に委託しています。また、食品産業特定技能協議会への申請 も必要です。

② 雇用条件・給与の設定

雇用形態は、直接雇用に限られます。外国人労働者の雇用条件や給与は、日本人と同等以上であることが求められます。特に、手取り額を重視する外国人労働者のために、寮や社宅の提供などの工夫が必要です。

雇用条件を決定したら、実際に外国人労働者の募集を開始します。以下のような方法があります。

• 自社のホームページやSNSでの求人情報発信
• 登録支援機関への人材紹介依頼
• ハローワークなどの公的機関の利用
• 国内外の民間職業紹介機関の利用

④ 在留資格の申請

内定を出し、雇用契約を結んだら、出入国在留管理局に特定技能「飲食料品製造業」の在留資格申請を行います。外国人が既に日本にいる場合は在留資格変更申請、海外にいる場合は在留資格認定証明書交付申請を行います。

◇入国まれの流れ

▷引用：農林水産省 資料「飲食料品製造業分野特定技能1号技能測定試験について」pdf

さいごに

特定技能「飲食料品製造業」は、日本の飲食料品製造業界における労働力不足を解消するための重要な制度です。外国人材が日本で幅広い業務に従事できるようになることで、企業の生産性向上や国際競争力の強化が期待されています。一方で、受け入れ企業には適切な支援体制を整えることが求められます。これにより、特定技能外国人が安心して働ける環境が整備され、彼らの技能が最大限に発揮されることが期待されます。

特定技能「飲食料品製造業」を活用することで、企業は新たな人材を迎え入れ、事業の成長を図ることができます。また、外国人材にとっても、日本での就労機会が広がり、キャリアアップの道が開かれます。今後もこの制度の活用が進むことで、日本の飲食料品製造業界がさらに発展していくことが期待されます。

※2024年3月の閣議決定にて、特定技能制度の大幅な変更がありました。下記の記事にまとめていますので、ご覧ください。