日本の深刻化する人手不足への対応のため、2019年に創設されたのが在留資格「特定技能」です。
(詳しくはこちらの記事をご覧ください。▷在留資格「特定技能」とは?)
特定技能とは・・・
中小・小規模事業者をはじめとした人手不足は深刻化しており、我が国の経済・社会基
盤の持続可能性を阻害する可能性が出てきているため、生産性向上や国内人材確保のため
の取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において、一
定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていく仕組みを構築するために特
定技能制度が創設されました。
(引用:特定技能ガイドブック|出入国在留管理庁)
今回は、特定技能の「素形材産業」についてまとめました。
日本の製造業界で外国人労働者を受け入れるための在留資格の一つに、特定技能「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」があります。この資格は、もともと「素形材産業」という分野でスタートしましたが、2022年5月に製造3分野(素形材産業分野、産業機械製造業分野、電気・電子情報関連産業分野)が統合されて現在の形になりました。なお、令和6年3月の閣議により、分野名が「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」から「工業製品製造業」に変更されました。この記事では、この特定技能「素形材産業」について詳しく紹介します。
特定技能「素形材産業」とは?
特定技能「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」は、日本の経済産業省が所管する分野です。この分野で外国人を雇用する場合、派遣での雇用は認められず、直接雇用する必要があります。
特定技能「素形材産業」で可能な業務・業種とは?
特定技能「素形材産業」では、外国人が従事できる業種は全部で19種類あります。これらの業種は以下の通りです。(▷参考:経済産業省「製造業における特定技能外国人材の受入れについて」pdf)
- 鋳型製造業(中子を含む)
- 鉄素形材製造業
- 非鉄金属素形材製造業
- 機械刃物製造業
- 作業工具製造業
- バルブ・コックを除く配管工事用附属品製造業
- 金属素形材製品製造業
- 溶融めっき業(表面処理鋼材製造業を除く)
- 電気めっき業(表面処理鋼材製造業を除く)
- 金属熱処理業
- その他の金属表面処理業(アルミニウム陽極酸化処理業に限る)
- ボルト・ナット・リベット・小ねじ・木ねじ等製造業
- はん用機械器具製造業(消火器具・消火装置製造業を除く)
- 生産用機械器具製造業
- 業務用機械器具製造業(医療用機械器具・医療用品製造業及び武器製造業を除く)
- 電子部品・デバイス・電子回路製造業
- 電気機械器具製造業(内燃機関電装品製造業を除く)
- 情報通信機械器具製造業
- 工業用模型製造業
これらの業種において、任せられる業務は以下の3区分に分けられます。
1. 機械金属加工
指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、素形材製品や産業機械等の製造工程の作業に従事
- 鋳造
- ダイカスト
- 金属プレス加工
- 工場板金
- 鍛造
- 鉄工
- 機械加工
- 仕上げ
- プラスチック成形
- 溶接
- 塗装
- 電気機器組立て
- 機械検査
- 機械保全
- 工業包装
2. 電気電子機器組立て
指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、電気電子機器等の製造工程、組立工程の作業に従事
- 機械加工
- 仕上げ
- プラスチック成形
- 電気機器組立て
- 電子機器組立て
- プリント配線板製造
- 機械検査
- 機械保全
- 工業包装
3. 金属表面処理
指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、表面処理等の作業に従事
- めっき
- アルミニウム陽極酸化処理
これらの業務に従事する外国人労働者は、特定技能1号や2号の在留資格を持つことで、これらの作業に従事することができます。
特定技能「素形材産業」の取得要件とは?
1. 特定技能1号評価試験と日本語評価試験に合格する
特定技能「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」の在留資格を取得するためには、「製造分野特定技能1号評価試験」と日本語評価試験(日本語能力試験N4以上または国際交流基金日本語基礎テスト)に合格する必要があります。
2. 技能実習2号からの移行
技能実習2号を修了した外国人は、特定技能1号に移行することができます。この場合、技能測定試験および日本語試験を受験する必要はありません。ただし、技能実習2号の職種と特定技能1号の職種が対応している必要があります。
特定技能「素形材産業」の評価試験
特定技能「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」の評価試験は、学科試験と実技試験で構成されています。試験は日本国内およびタイ、インドネシア、フィリピン、ネパールで実施されており、現地語で行われます。
学科試験
学科試験は共通問題と選択問題で構成されており、以下の内容が出題されます。
共通問題
- 安全衛生
- 機械工作法
- 鋳造一般
- 電気
選択問題
- 鋳鉄鋳物鋳造作業法
- 非鉄鋳物鋳造作業法
実技試験
実技試験も選択問題で構成され、受験者は鋳鉄鋳物鋳造作業法または非鉄鋳物鋳造作業法のいずれかを選択して受験します。
特定技能「素形材産業」の外国人材を採用するには?
1. 受け入れ側企業の要件
特定技能外国人を受け入れる企業は、以下の要件を満たす必要があります。
対象産業に該当していること
特定技能外国人を受け入れる企業の業務が、日本標準産業分類のいずれかに該当していることが必要です。これに該当しない場合、特定技能外国人を雇用することはできません。
特定技能協議会への加入
企業は「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」に加入する必要があります。加入手続きは「特定技能外国人材制度(製造3分野)ポータルサイト」から行うことができます。
2. 特定技能外国人に対する支援
受け入れ企業は、特定技能1号の外国人に対して以下の支援を行う必要があります。
住居の確保や金融機関の口座開設
外国人が日本で生活するために必要な住居の確保や、金融機関の口座開設を支援します。
日本語学習の機会提供
外国人が日本で円滑に生活できるよう、日本語を学習する機会を提供します。
日本人との交流の場の提供
日本人との交流を促進するための場を提供し、文化的な理解を深める支援を行います。
これらの支援は、登録支援機関に委託することが可能です。すべての支援を委託した場合でも、適切な支援体制が整備されているとみなされます。
3. 同一労働同一賃金の遵守
特定技能外国人に対しても、日本人労働者と同じく同一労働同一賃金のガイドラインを遵守する必要があります。
さいごに
特定技能「素形材産業」の在留資格を持つ外国人労働者を受け入れることで、企業は必要な労働力を確保し、業務の効率を向上させることができます。しかし、受け入れにはさまざまな要件を満たす必要があり、適切な支援体制を整えることが求められます。特定技能外国人を適切に受け入れるためには、企業がしっかりとした準備を行い、外国人労働者が安心して働ける環境を整えることが重要です。
※2024年3月の閣議決定にて、特定技能制度の大幅な変更がありました。下記の記事にまとめていますので、ご覧ください。
なお、当事務所の代表は日本語教師歴10年以上の経験を持ち、日本語研修やマナー研修を行うことが可能です。外国人労働者の方々が円滑に業務に取り組めるよう、お手伝いできればと考えております。ご依頼やご相談は、下記のコンタクトフォームからお気軽にお問い合わせください。