在留資格「介護」とは?

外国人は、原則として在留資格を持っていないと、日本に在留することはできません
その外国人が日本で行おうとする活動が、法務省の定める在留資格に該当しなければ、在留資格を与えられることはありません。

在留資格と査証の違いについてはこちらの記事でまとめています。

在留資格は、さまざまなものがあります。
外国人が介護施設で介護職として働くための就労系の在留資格の1つが「介護」です。平成29年9月から正式に就労系の在留資格として認められた比較的新しい資格です。今回は、この「介護という在留資格について紹介します。

在留資格は大きく2系統

在留資格は在留の目的に応じて大きく2系統にわかれます。

①活動系(入管法別表第一)

日本で行う活動に応じた在留資格
)就労・留学・家族滞在など
②身分又は地位系(入管法別表第二)

身分や地位に応じた在留資格
)永住者・日本人の配偶者や子など

参考:在留資格について(出入国在留管理庁のページです)

中長期在留者とは?~在留資格を与えられる外国人~

入管法第19条の3には、以下のように書かれています。

入管法第19条の3(中長期在留者
出入国在留管理庁長官は、本邦に在留資格をもって在留する外国人のうち、次に掲げる者以外の者(以下「中長期在留者」という。)に対し、在留カードを交付するものとする。

1号:3月以下の在留期間が決定された者
2号:短期滞在の在留資格が決定された者
3号:外交又は公用の在留資格が決定された者
4号:前3号に準ずる者として法務省令【施行規則19条の5】で定めるもの

つまり、中長期在留者とは・・・
3か月以上日本に在留する
・「短期滞在」「外交」「公用」の在留資格が与えられていない
・「特定活動」の在留資格が決定された台湾日本関係協会の日本の事務所、若しくは、駐日パレスチナ総代表部の職員又はその家族ではない
・特別永住者ではない

在留資格は29種類(令和6年8月時点)

法務省が定めている在留資格は29種類あります。
今回は、そのうちの「介護」について紹介します。

在留資格「介護

介護福祉士の資格を持っている外国人が、介護または介護の指導を行う業務をするための在留資格です。

・該当例

入管法別表第一によると・・・
本邦の公私の機関との契約に基づいて介護福祉士の資格を有する者が介護又は介護の指導を行う業務に従事する活動

つまり、以下の者が該当します。
介護福祉士

・在留期間

5年、3年、1年、3月

・業務範囲は?

病院、介護施設等で入浴、食事の介助などの介護業務全般を行う活動のことです。また、ケアプランの作成や訪問介護も含まれています。

・「介護」取得の要件

在留資格「介護」を取得するためには、以下のような要件を満たさなければなりません。

① 介護福祉士の国家資格を取得していること ※1
② 日本の会社(介護施設)と雇用契約を結んでいること
③ 職務内容が「介護」または「介護の指導」であること
④ 日本人が従事する場合における報酬額と同等額以上の報酬を受けること

※1 なお、令和2年4月1日に在留資格「介護」の上陸基準省令が改正され、実務経験を経て介護福祉士資格を取得した外国人についても、「介護」への在留資格移行が可能となったため、介護福祉士資格の取得ルートは問われなくなりました

・在留資格「介護」取得のルート

主に2つのルートがあります。

養成施設ルート

在留資格「留学」で入国(留学生)→介護福祉士養成施設(2年以上)→介護福祉士資格取得(登録)

実務経験ルート

在留資格「特定技能1号」などで入国→介護施設等で就労・研修(3年以上)→介護福祉士資格取得(登録)

・介護福祉士資格取得までの経過措置

平成28年(2016年)までに、介護福祉士養成施設等を卒業した学生については、国家試験を受けることなく介護福祉士の資格を取得することができました。しかし、平成29年(2017年)の卒業生からは、介護分野における人材の質の向上のため国家試験の義務化が予定されていました。
しかしながら、介護現場の人材不足に拍車がかかることが懸念されたため、令和4年度(2022年度)に先送りされていました。
そして、また新たに施行を5年間延期することが決定したため、2024年4月現在でも、介護福祉士の国家試験義務化は未施行です。国家試験の義務化が人材確保を阻むことが懸念されており、延期が続いています。国家試験の義務化がさらに延期したことに伴い、経過措置も延長されるため、介護福祉士養成施設卒業者は、令和8年度(2026年度)までは既存の経過措置に則ることで介護福祉士の資格が保持できます。
▷参照:地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律(pdf)

・『介護職』の在留資格~類似する在留資格との比較~

介護業界では人材不足が大変深刻化しており、現在、在留資格「介護」以外にも、3つの在留資格によって介護職に従事することが可能となっています。それぞれ確認していきましょう。

特定活動「EPA介護福祉士候補者」→ 特定活動(EPA介護福祉士)

経済連携協定(EPA)に基づいて、日本の介護施設で就労・研修をしながら介護福祉士の資格取得を目指す外国人に与えられる在留資格です。日本語研修や介護研修を事前に行い、試験がないため、入国にあたっては低い難易度と言えますが、最終的には介護福祉士の国家試験に合格する必要があり、難易度は高いでしょう。特定活動「EPA介護福祉士」は、特定活動「EPA介護福祉士候補者」として来日しますが、資格取得後も継続して日本に滞在することが期待される在留資格です。

【受入国】
インドネシア・フィリピン・ベトナム(それぞれの国によって、研修期間や求められる日本語能力が異なる)
【在留期間】
4年(在留期間更新に制限なし)
特定活動「EPA介護福祉士候補者」は、介護現場で働きながら資格取得を目指せます。4年の在留期間内に、介護福祉士の国家試験に合格して、特定活動「EPA介護福祉士」の在留資格に変更すれば、在留期間更新に制限がないため、介護福祉士としての活動を継続する限り、日本に滞在することができます。

【介護福祉士取得までに必要な、実務経験等の年数】
・就学コース:介護福祉士養成施設で2年以上
・就労コース:介護施設等で就労、研修を3年以上
【家族帯同】
不可(しかし、介護福祉士試験に合格することで、特定活動「EPA介護福祉士」へ在留資格を変更することが可能となり、家族帯同も可能になる。)
【受入実績】▷参照:介護分野における特定技能協議会運営委員会の令和4年度第1回の資料(pdf)
3257人(資格取得者635人)※2023年1月時点

特定技能「介護」

在留資格「特定技能」は、深刻な人手不足に悩む特定の分野において、一定の専門性や技能を持った外国人を受け入れるために設けられた在留資格です。介護分野においても、特定技能外国人が受け入れられていますが、特定技能の在留資格を取得するためには、厳しい要件を満たす必要があります。なお、日本語能力の目安はN4程度とされています。

【受入国】
特になし(二国間取り決めを作成した国あり)
【在留期間】
最長5年

【介護福祉士取得までに必要な、実務経験等の年数】
介護施設等で3年以上
【家族帯同】
不可(特定技能には1号と2号があるが、介護分野が該当となるのは特定技能1号のみ。)
【受入実績】▷参照:介護分野における特定技能協議会運営委員会の令和4年度第1回の資料(pdf)
17066人※2023年1月時点

技能実習「介護」

外国人技能実習制度は、日本の技能・技術・知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的としており、在留資格は「技能実習1号」「技能実習2号」「技能実習3号」に分けれられています。なお、1号から2号、また2号から3号にステップアップするためには、技能検定試験の合格が必要であり、日本語能力は1年目はN4以上、2年目はN3以上のレベルが求められます。
▷参照記事:技能実習廃止→育成就労(仮)へ

【受入国】
特になし(二国間取り決めを作成した国あり)
【在留期間】
最長5年

【介護福祉士取得までに必要な、実務経験等の年数】
介護施設等で3年以上(技能実習2号以上が該当)
【家族帯同】
不可
【報酬について】
他の3種類の介護系在留資格の報酬は日本人と同等以上である必要があるが、「技能実習」の場合は最低時給以上とされている。
【受入実績】▷参照:介護分野における特定技能協議会運営委員会の令和4年度第1回の資料(pdf)
15011人※2022年6月時点

在留資格「介護」

【受入国】
特になし
【在留期間】
在留期間更新に制限なし

【介護福祉士取得までに必要な、実務経験等の年数】
・留学生の場合:介護福祉士養成施設で2年以上
・技能実習生の場合:介護施設等で3年以上
【家族帯同】
可能
【受入実績】▷参照:介護分野における特定技能協議会運営委員会の令和4年度第1回の資料(pdf)
5339人※2022年6月時点

さいごに

今回は、在留資格の「介護」について紹介しました。「介護」の在留資格は、日本語能力はN2程度必要であったり、介護福祉士試験の合格が難しかったり、少々難易度の高い資格です。しかしながら、在留期間の更新に制限がなかったり、家族帯同も可能なため、日本で長く働く人にとっては魅力的な在留資格です。


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