外国人は、原則として在留資格を持っていないと、日本に在留することはできません。
その外国人が日本で行おうとする活動が、法務省の定める在留資格に該当しなければ、在留資格を与えられることはありません。
▷在留資格と査証の違いについてはこちらの記事でまとめています。
在留資格は、さまざまなものがあります。
外国の事業所から日本の関連事業所に一定期間転勤する外国人に必要な在留資格が「企業内転勤」です。今回は、この「企業内転勤」という在留資格について紹介します。
在留資格は大きく2系統
在留資格は在留の目的に応じて大きく2系統にわかれます。
日本で行う活動に応じた在留資格
例)就労・留学・家族滞在など
身分や地位に応じた在留資格
例)永住者・日本人の配偶者や子など
参考:在留資格について(出入国在留管理庁のページです)
中長期在留者とは?~在留資格を与えられる外国人~
入管法第19条の3には、以下のように書かれています。
入管法第19条の3(中長期在留者)
出入国在留管理庁長官は、本邦に在留資格をもって在留する外国人のうち、次に掲げる者以外の者(以下「中長期在留者」という。)に対し、在留カードを交付するものとする。1号:3月以下の在留期間が決定された者
2号:短期滞在の在留資格が決定された者
3号:外交又は公用の在留資格が決定された者
4号:前3号に準ずる者として法務省令【施行規則19条の5】で定めるもの
つまり、中長期在留者とは・・・
・3か月以上日本に在留する
・「短期滞在」「外交」「公用」の在留資格が与えられていない
・「特定活動」の在留資格が決定された台湾日本関係協会の日本の事務所、若しくは、駐日パレスチナ総代表部の職員又はその家族ではない
・特別永住者ではない
在留資格は29種類(令和6年8月時点)
法務省が定めている在留資格は29種類あります。
今回は、そのうちの「企業内転勤」について紹介します。
在留資格「企業内転勤」
在留資格「企業内転勤」は、外国人が日本の本店、支店、または系列企業で「技術・人文知識・国際業務」などの分野で働く際に必要となる在留資格です。この在留資格を取得することによって、様々なメリットが得られる一方で、注意すべきこともいくつかあります。
・該当例
入管法別表第一によると・・・
本邦に本店,支店その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員が本邦にある事業所に期間を定めて転勤して当該事業所において行うこの表の技術・人文知識・国際業務の項に掲げる活動
つまり、以下の者が該当します。
外国の事業所からの転勤者
・在留期間
5年、3年、1年、3月
・職種について
技術
システムエンジニア、プログラマーなど、航空機の整備士(航空宇宙額の技術・知識を必要とする)、自動車整備士、設計業務・開発業務などの理系の活動。
人文知識
経理、金融、総合職、会計、コンサルタント等の学術上の素養を背景とする一定水準以上の専門知識を必要とする文系の活動。
国際業務
翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝、海外取引業務、デザイン、商品開発等の外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性に基づく一定水準以上の専門的能力を必要とする文系の活動。
・注意点
単純労働不可
在留資格「企業内転勤」で認められる活動は「技術・人文知識・国際業務」と同様に自然科学や人文化学などの分野で一定以上の専門的な知識や技術を必要とする業務である必要があり、専門性の無い一般的なサービス業務や製造業務などの単純労働は認められていません。
業務実績
転勤元である関連会社で、直近1年以上継続して「技術・人文知識・国際業務」に該当となる業務実績が必要です。外国にある事業所等において、1年以上継続して勤務していない場合には「企業内転勤」の在留資格に該当しませんので、注意が必要です。また、日本での職務内容と、外国での職務内容に関連性がなければいけません。
報酬
転勤先となる日本での報酬は、日本人が勤務する場合と同等以上である必要があります。
期間
「期間を定めて」転勤する必要があるため、無期限に日本で勤務する者は、この在留資格に該当しません。
転勤可能な会社の範囲
外国にある支店や本店から、日本国内にある本店や支店のような同一会社内に転勤する場合は、もちろんのこと、他に子会社、関連会社関係にある場合の転勤、つまり系列企業内の出向等も含まれます。
学歴要件は?
在留資格「企業内転勤」に、学歴要件はありません。この在留資格を申請する上で求められている要件は、①申請直前まで在留資格「技術・人文知識・国際業務」の職務に1年以上従事していること、②日本人と同等額以上の報酬を受けることの2つです。そのため、大学等の学歴要件は不要となります。
・「企業内転勤」取得の主な要件
在留資格「企業内転勤」を取得するためには、以下の要件を満たさなければなりません。
・日本企業と雇用契約をしている(業務・期間・労働条件等が明示されている)
・企業内転勤計画書が提出されている(企業の情報・業務内容・雇用条件)
・一定の日本語能力の要件を満たしている(日本語能力試験や面接によって判断される)
・勤務実績や経験の要件を満たしている(過去の業務実績の証明が求められるケースがある)
これらの要件は一般的な基準のため、詳細な要件については法令をしっかりと確認する必要があります。業種や職種によって異なる項目もあるため、注意が必要です。
・申請時の注意点
在留資格「企業内転勤」の申請の際には、所属機関を基準にカテゴリー1からカテゴリー4まで、4つの区分が設けられています。上位のカテゴリーになるほど、必要となる提出書類が少なく、資格取得も有利に進みます。
1.日本の証券取引所に上場している企業
2.保険業を営む相互会社
3.日本又は外国の国・地方公共団体
4.独立行政法人
5.特殊法人・認可法人
6.日本の国・地方公共団体認可の公益法人
7.法人税法別表第1に掲げる公共法人
8.高度専門職省令第1条第1項各号の表の特別加算の項の中欄イ又はロの対象企業(イノベーション創出企業)
9.一定の条件を満たす企業等
1.前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中、給与所得の源泉徴収合計表の源泉徴収税額が1000万円以上ある団体・個人
2.在留申請オンラインシステムの利用申出の承認を受けている機関(カテゴリー1・カテゴリー4の機関を除く)
前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表が提出された団体・個人(カテゴリー2を除く)
上記カテゴリーに該当しない団体・個人
・類似する在留資格との違い
技術・人文知識・国際業務
【学歴・職歴】
「技術・人文知識・国際業務」では、大学(短大含む)や高等専門学校、日本の専修学校の専門課程を修了し「専門士の称号」を得ていることや、10年・3年以上の実務経験が求められるのに対し、「企業内転勤」は学歴・職歴に関する要件がありません。そのため、最終学歴が高卒であったり、経験が浅い方でも在留資格の取得を目指すことが可能となります。
【転職】
「技術・人文知識・国際業務」では、業務内容や報酬額に問題がなければ、転職が可能で、転職後も在留資格の変更をする必要はありません。一方、「企業内転勤」は関連会社間での転勤を行うための在留資格のため、もし日本で別の企業に転職する場合は別の在留資格に変更する必要があります。
【契約・報酬】
「技術・人文知識・国際業務」は、日本の公私の機関との契約(雇用契約等)に基づき、日本の公私の機関から報酬を受ける必要がありますが、「企業内転勤」は転勤元である海外の機関との契約のまま、そして報酬は海外の機関と日本の機関どちらからも受けることが可能です。
経営・管理
在留資格「企業内転勤」は経営者を対象とした在留資格ではありません。あくまで特定の技術や専門知識を必要とする業務に従事する外国人労働者が対象となっています。そのため、経営者となる場合は「経営・管理」に関する在留資格の取得が必要です。
さいごに
今回は、在留資格の「企業内転勤」について紹介しました。「企業内転勤」の在留資格を取得することによって、所属している企業での異動や転勤ができるようになり、より柔軟なキャリアパスが描けるようになります。また、その結果として、生活基盤を安定させることができますので、該当する方はぜひこの在留資格取得に向けて準備をしっかりと行いましょう。
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